藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
同意は要らない
仕事でもこのブログでも、文章を書くときは「わかってもらう」ことを心がけます。この場合「わかってもらう」ということは、伝えたいことを明確にして、それを相手の心に届けるということです。自分の考えに賛同してもらうことではありません。「発言する」とは、予期せぬ反応を引き受けること。それには勇気が必要です。わかってもらって、異なる考え方や反対意見を述べてもらえることが出来れば、そこには議論の空間が生まれ、有機的に複数の思考がつながりあいます。

「わかってもらう」ことばかり考えて仕事をしていると、誤解されたり否定されたりすることが怖くなります。賛成してもらったり共感してもらわないと気が済まなくなっていきます。

本当に怖いことは「無視」や「無関心」なんです。誤解は何かを生みます。否定に向かい合い語り合えばひとつ上の次元のコンセプトを得ることができます。しかし無視は何も生まない。

日常のどんなに些細なことでもいいから、世界に対する関心を掻き立て、語り合う場を増やし、複数の思考が有機的につながりあう空間をつくることで、「無視」が減っていく。だから多くの人がスモールメディアを自発的つくることが重要だと考えています。

マスメディアの「無視」は強力な権力行使です。取り上げられない人や事象は歴史に埋もれていきます。スモールメディアの関心は力が微弱です。しかし自律分散するスモールメディアが自己組織化して、メタメディアになる可能性があります。コミケは同人誌というスモールメディアが自己組織化したメタメディアと見る捉え方もできるわけです。(もちろんコミケはしっかりした運営管理組織があるわけで、真の自己組織化とか創発だとか言えませんが……)。

ある閾値を超えると、スモールメディアは自己組織化することでメタメディアとなり、既存のマスメディアに匹敵する力を持つかもしれない。

スモールメディアが既存のマスメディアと同じ形態をとる必要はないと考えています。特にデザインジャーナリズムの場合は、メディアのあり方自体をどうデザインするかという姿勢も、そこに書かれている記事と同等に大切なことです。

どこまで雑誌らしさや書籍らしさを崩せるかといった実験もありだと思っています。でも判読性を崩すようなやり過ぎは禁物。昨日のトークの冒頭では、その失敗例(実験内容の失敗ではなく、売れなかったという意味での失敗ですが)を話しました。

情報の受け手は、メディアのフォーマットが変わることを嫌います。そこを納得してもらうのが、作り手のワザなのですが、簡単なことではありません。本を買う人は本らしさも同時に買っています。アーティストの作品集ならアーティストブックという枠組みをつくって、作り手の実験を理解してもらうようにしますが、なかなかお金を出してくれません。作品集は作品が大きく載っているのに越したことはないわけですから。

雑誌のあり方をデザインするときは、雑誌らしさをいかに残してながら新しい要素を入れるかを考えないといけません。書籍もブログも同じ。ここがホント難しい。

批評が目的ではありません。関心の輪を広げることが目的です。輪の中から批評は自ずと立ち上がります。スモールメディアがつながれば、新しい形のデザインジャーナリズムが見えてくるかなって思ってます。そんなことを@btfのトークを振り返りながら考えてます。

トークでもうひとつ気づいたのは、話すこともジャーナリズムだということ。当たり前のことなのかもしれませんが、僕は今までその意識に欠けていたように思います。ジャーナリストが人前でしゃべるときは、明確に今話していることもジャーナリズムの一環だという意識を持たないといけない。

仕事で記事を書くときは、ある程度読者の反応を予想しながら書けるけど(たとえばこの表現は煽りすぎだとか、ネガティブな言い回しになっているとか)、話すことに関してはそうした技量がまだありません。その分、翌日、トークの反応が知りたくてハラハラしながらネット検索している小心者の自分がいるわけで、まだまだプロのジャーナリストとしての器量も勇気も欠けることを自覚したり……。

同意よりも、多様な意見を引き出せる力を鍛えます。

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右から、フクヘンの鈴木さん、ぽむ企画の平塚さん、Glyph.の柳本さん、藤崎。みなさまお疲れさまでした。運営の@btfのスタッフの方々、長時間の話を聴いていただいた参加者のみなさま、有り難うございました。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-07-26 17:15 | お気に入りの過去記事 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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