藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
SENSEWARE東京巡回展
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21_21 DESIGN SIGHTへ「TOKYO FIBER '09──SENSEWARE」展(27日まで。入場無料!)のオープニングレセプションに行ってきました。東京で見る同展は、春にミラノで見た同展と、微妙に感触の違うものでした。パリッ、カラッと見えた作品が、10%くらい湿度を含んで見えるんです。人工繊維がそれぞれの風土の空気の感触を映し出しているというか、、、とにかく面白い展覧会です。
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本展にあわせて朝日新聞出版から出された書籍に、ミラノ展の約8000字のレポートを寄稿しています。冒頭だけ引用しましょう。

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私たちは人がつくりしものの中で暮らしている。自然に憧れ、森の暮らしに還れても、人がつくりしものは手放すことはできない。衣服も食材も家も、それをつくる道具も、それらを運ぶ乗り物も道路の舗装材も、生産と消費の無限ループシステムから生まれたプロダクトである。

近代社会では「生産」の対義語は「消費」とされる。しかし消費とは身体性の欠如した言葉である。祖母が縫った綿入れを着るときや、庭でつくったトマトを家族で食べるとき、それを「消費する」と表現する人はいない。本来「つくること」の後には、「使う」「食べる」「着る」「住まう」「楽しむ」というさまざまな行為が続いている。

産業革命以降の大量生産の進展が、それらをひとまとめてして「消費」という言葉に押し込めて、「生産」の対義語にしてしまった。その過程で何かが抜け落ちた。

「TOKYO FIBER '09──SENSEWARE」展のディレクターを務めた原研哉から「SENSEWAREとは感覚を鼓舞し、創造行為を触発する媒質」という話をうかがったとき、その何かが見えてきたような気がした。

生産技術は向上している。微細加工技術や材料工学などの進歩で、機械生産は熟練した職人技に質的に劣るとはもういえない。が、消費の質は向上しているだろうか。消費を意味する英語のconsumeは、ラテン語起源で、conは「完全に」、sumeは「取る」の意である。消費の良し悪しは、どこまで使い尽くすかであり、それは質というより量の問題である。

そのため消費の美学は蕩尽に向かう。どう使うか、どう味わうか、どう着こなすか、どんな行為を触発するかといった身体行為と密接に関わる質的な問題意識は脇に置かれてしまう。

生産に消費を対置することで、生産の質も危機に瀕する。ものづくりや創造行為でさえ量の問題にされてしまいかねなくなる。そこで「生産」に対になる言葉として「消費」の代わりに「感じること」を置いてみる。「感じること」なら「質」を問える。そうすることで「生産の質」への問題意識も向上する。

デザインの役割も変わらなくてはいけない。「消費」を促すためのデザインから、「感じること」を促すためのデザインへ──。

以下の論考は筆者がミラノで取材した「TOKYO FIBER '09」展の報告である。同展を感じることの質を高める実験室として捉え、その出品作から21世紀のものづくりのあるべき姿を読みとってみたい。
(このあとは、書籍で読んでみてください)
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-09-17 23:50 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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