藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
面の断章
「面」を考える授業で考えたことをまとめてみた。
箇条書きの文章なので、興味がある方だけ、どうぞ。



*****面の諸相*****

【集合の面】
ポリゴンの面。
多数の面を構成することでひとつの面を作り出す。
CGのポリゴンでは、無数の単純な面で複雑なひとつの面を作り出す。モザイク etc.

逆に無数の複雑な面がひとつの単純な面を作り出す場合もある。たとえば地球の表面。陸地の複雑の起伏も宇宙から見れば“丸い地球”を覆う単純な球面を構成するものに過ぎない。

単純という言い方は誤解を招く。「ひとつの世界として完結した」と言い換えた方がいい場合がある。たとえばゴッホの絵画。この画家が画布に置く一筆をひとつの面と考えれば、その複雑な筆致の集合体は単純な面とは言い難い。が、それは唯一無二の世界として完結した面であることは間違いない。

【単一の面】
一枚の平面による面。

【層状の面】 
レイヤーの面。
多数の面が重ね合って、ひとつの面を作り出す。
コラージュ作品のように重なり合っているのが分かる面。上の層がめくれあがって下の層が露出している面。オペークガラスなどを使い、透明度の違う面を重ね合わせて奥行きのある面を作ることができる。

こうした面の場合、「断面」というもうひとつの面が生じる。地層や年輪などの断面は、時間の経過を示す。

コンピュータ上では重なり合う面に断面が生じない。Photoshopは、多くのレイヤーを重ね合わせてひとつの面を作る。そこに厚さは生じない。焦点があった画像を前景にピントのぼけた画像を後景にすれば、遠近感が生じる。空気遠近法のようなものである。コンピュータのレイヤーは厚さがないので無限に重ね合わすことができ、面(レイヤー)だけで空間が表現できる。

【テクスチャーとしての面】
表情としての面。
テクスチャーや質感は面の性質を表す。特に素材の特性を示す。微細な質感表現は作り手の力量が最も表現される部分。しかし、面の表情は環境によって左右される。光(明るさ)や大気の湿度、さらには観察者の見る位置などに変化する。
表情とは、感情を表すだけでない。情況も表す。

面のテクスチャーは視覚だけでなく触覚で認識される。視覚と触覚が連動する場合もある。テクスチャーを見ただけで、ザラザラ、ツルツル、フワフワといった触覚的な感覚が呼び起こされる。

【アイデンティティとしての面】
顔としての面。輪郭とテクスチャーの両方を持つことで、面はアイデンティティを表す。顔の輪郭だけでは誰だか分からない。皮膚だけ見ても誰だか分からない。

【密度の面】
内容が外に現れた面。内容物がそのまま面に現れた場合、内容物の密度によって面の性格は変わる。気体のような密度が少ない時には、境界があいまいになる。代表的なものが雲。近くで見ると面が存在しないのに、面として見える。密度の薄い場合、触感を伴わない。

【拒絶の面】
面が2つの世界の境界線。決して混じり合わないもの。
城塞や監獄の巨大な壁(塀)は2つの世界の拒絶を示す。

【広がりの面】
面の広がりは無限や崇高を示す。宗教建築やモニュメントの巨大な壁は崇高な存在へ繋がる超越的な存在を示す。

【傷としての面】
切り裂く面。面は面によって切り裂かれる。傷。関係を引き裂くもの。
または、深層をえぐり出すもの。断面。

【場としての面】
ひとつの面が特殊な場をつくりだす。共同体意識を生む場。国や県や村の輪郭。そこにしか通用しないルールのある場──playの場。広場、スポーツのフィールド、ステージ、シーン、場面、テレビゲームの一面、二面、三面……

【インターフェイスとしての面】
つながりを生む面。
面は2つの異なる世界が接し合うことで生まれる。

インターフェイスとは界面。化学の世界では2つの異なる物質が接して化学反応が起こる場のこと。
皮膚は2つの世界の境界であると同時に、人間が外気が呼吸する場である。境界であると同時に交流し反応しあう場。呼吸が生まれる場。
コミュニケーションが発生すると面が生じる。インターフェイスの構造が2つの世界の接し方を決める。言い換えると、面をデザインすることは2つの世界のコミュニケーションの方法を決定することだ。
窓、障子なども仕切りである同時にインターフェイスの面である。

【スクリーンとしての面】
映し出す面。鏡としての面。画面。スクリーン。
その面が何でできているかなど物体としての実体は問われない。

映し出された世界と見るものをつなぐ。つなぐという意味ではインターフェイスとしての面と同じだが、相違点はスクリーンや鏡には2つの世界の境界という意味合いがないこと。

******
線は人間がかたちを記述するため、面は人間がコミュニケーションの様子を記述するために作り出したツールと言えるかもしれない。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-07-06 00:23 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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