藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
ヒューマンインタラクションラボの実力
日立グループの展示会「uVALUEコンベンション2005」に行ってきた。ユビキタスをテーマに日立の最新鋭技術が結集した展示会。東京国際フォーラムにおいて7月20・21日に開催された。

日立のヒューマンインタラクションラボで開発されていた技術が2つ製品化されて展示されていた。
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ひとつはミラー型情報端末「ミラグラフィ」。鏡をディスプレイにしてしまうもの。ブティックなどで鏡として使いながら、ミューチップ(日立の開発した超小型ICチップ)が内蔵された正札をかざすと、ミラーに商品に関連した情報が映るといった応用が考えられている。環境映像を流すだけでもいい。鏡の中にもうひとつの世界があるように見えて不思議な雰囲気をかもし出す。
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もうひとつは「シルエットカウンター」。テーブルの上がディスプレイになっていて、手をかざすと手の影を感知して画面の操作ができる。影を検知するのでテーブルに物を置いても反応する。たとえばディスプレイ上を右から左へ流れる文字が物に遮られて流れの向きを変えたりといったデモンストレーションが行われていた。
ショールームや飲食店で、情報の流れるカウンターテーブルとして使えるし、画像が映し出されたテーブルの四方に人が立ち、まるで将校たちの作戦戦略会議をするように、ディスプレイを指さしたり触れながら討論するといった使い方ができる。

日立ヒューマンインタラクションラボは、2002年秋、日立の若手デザイナーとエンジニア、マーケッターの有志が集まって日立製作所デザイン本部内に結成された組織。発想の次元からデザイナーと技術研究開発者がコラボレーションすることは、ありそうで、実現しないものだ。たいていは研究者の生んだ新しい技術が先にあって、それにデザイナーが形を与えるというバケツリレー型の開発が多い。

この組織では、デザインの発想が最初から技術開発に活かすことができる。マーケッターもいるので市場分析/技術開発/デザインの3つの発想が開発の最上流でタッグを組んでいるわけだ。ヒューマンインターフェイスのように人寄りの技術を開発するには理想の状態と言える。

東京・国分寺の日立の研究所内でその活動の一端を見せてもらったことがある。若手の研究者とデザイナーがアトリエで自由にメディアアート作品を作っているという雰囲気。ヒューマンインターフェイスの取材でよく大学の工学部の研究室を訪れるが、ほとんどの研究室はよれよれのTシャツを着たサンダル履きの学生がモワーンとした空気を漂わせている(特に夏)。ヒューマンインタラクションラボ専用室はインテリアも特注で、工学系にありがちの雰囲気は皆無。人と機械の接点の技術は、こういう空気の中で生み出すべきだと思ったものだ。

ヒューマンインタラクションラボのプロジェクトが製品化されることは、デザインの新しい地平を切り拓くことに他ならない。頑張ってもらいたい。


他に「uVALUEコンベンション2005」では、電子ペーパーが面白かった。ディスプレイの表示を変えるときだけ電気を使い、表示中は電気不用。バッテリーが長持ちするので、バスや駅の運行表示などに使えるというもの。表示はモノクロ。カラーも将来対応していきたいと説明してくれた方が言っていた。
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にしても、私たちの行動がどんどんログとして残る社会に変わりつつあることを実感。ユビキタス環境とは人の行動のログが残る環境ということ。もちろん個人情報保護でたいていのログは消えていくが、しかし、誰かが行動を監視しようとすれば、精細に人の行動をスキャンし解析できる。どこで誰が見てるか分からない社会、それがユビキタスの暗黒面だと思う。

【関連リンク】
日立ヒューマンインタラクションラボ
・9月30日から発売されるミラグラフィ
・ミラグラフィの機構についてはヒューマンインタラクションラボのサイト内のここ。
シルエットカウンター
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-07-22 13:58 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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