藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
リビングワールドの仕事展「窓」@益子
昨日、益子に行ってきました。展覧会を見に行くためです。
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リビングワールドの仕事展「窓」(8月25日まで)。西村佳哲氏と西村たりほ氏によるリビングワールドの初個展です。

お盆の日曜日ということもあって東北自動車道はノロノロ。栃木県益子まで東京からクルマで4時間近くかかりました。しゃれた店構えの陶芸店が立ち並ぶ町の中心を過ぎて幾ばくか、山の緑が深くなってきたあたりに展覧会場となっているスターネットがあります。

スターネットには、カフェとショップのARKと展覧会場などに使われるZONEという建物があります。ARKのほうは切妻の屋根の平屋の建物。インテリアはいまどきのモダンテイスト。益子の中ではかなり異彩を放っています。カフェの食事はかなり美味いそうです。
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リビングワールドの仕事展は、ARKの向かいの小高い丘にある白を基調とした建物ZONEで行われています。西村さんは何故こんな遠くで個展をやってるんだろう、陶芸展じゃあるまいし、とチラッと思い、でも、どんな作品に出会えるか楽しみに、急勾配の坂道をよいしょと登ります。

会場には8種の作品が展示されていました。どの作品も私たちの視点を変えたり、時の刻み方を伸び縮みさせて、世界の眺めを変えてくれます。
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「植物たちの時間」という作品は、鉢植えの植物を固定カメラでずうっと撮影しています。鉢の前には液晶ディスプレイが置かれ、画面には過去6時間の変化の早回ししたものを映し出されます。観者は2つの時間を同時に体験することになるのです。時間をテーマにした作品は他にもあります。「砂時計」は1分とか5分とかを示しません。100人の子供が生まれる時間やジョン・ケージの有名な沈黙の演奏4分33秒を刻みます。
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「太陽からの眺め」は時を示す作品ですがポイントはむしろ視点の変化。太陽の位置から見たこの展覧会場となっている建物の線画CGがリアルタイムで表示されます。太陽から見た日時計といえるものです。

世界地図の上の小さなスピーカーの位置を変えると、その場所で録音してきた音が聞こえる「音卓」。世界の土地の記憶がイメージファイルでしかセーブされていない現代人にとって、音の記憶は新鮮でイマジネーションを広げます。
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そして「風灯:solar」。風鈴ではありません。音は鳴りません、光が風に響き合うのです。電源は太陽電池。以前イデーやe-fishで発表した最初の「風灯」はボタン電池式でした。

おのおのの風灯に太陽光発電パネルが付いています。昼間充電し、19時くらいになると自然に点灯しだします。ただし、風が吹かないと光は灯りません。短冊部分に揺れを感知するセンサーが付けられて、風で揺れるとLEDが発光するようになっているからです。風を見るのです。揺らめく光は風の姿です。絶対夜見ることをオススメします。
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風灯は建物の屋外に約100個設置されています。えっあんな高い木にどうやって?という場所にも付いてます。専門の植木屋さんが付けたそうです。販売もするそうです。今回の展示は耐久テストも兼ねているとのこと。もう台風も来ました。今は予約を受け付けている段階だとか。

宇宙のログ解析法。僕にはどの作品もそう思えました。風も植物の生長も時の経過の記憶も太陽の位置も、作品を通して可視化されます。可視化されたものはログとして私たちの心に刻まれます。普段は気にも留めない宇宙の痕跡が、ものの見方を変える装置=作品を通して私たちの心に知覚され、宇宙の摂理にまで想いを膨らませるきっかけになるのです。

可視化やログ化のために効果的に現代のテクノロジーが使われています。デザインってこういうものだと思います。エンジニアリングをそっと添えることで、見えないもの見て、行けない場所の視点からものが見られる。普段と違う時間の流れに身を置いて、視覚で感じてたものを聴覚で感じたり、感じ方を変えて、思考の枠組みを広げる。

メディアアートともいえるでしょう。情報デザインともいえるでしょう。どちらでもいいことです。ただデザインを深く考えている人なら、ここにデザインの要点を見いだすことができるはずです。

そうした作品群を展示するには、やはり東京から離れたあの場所がよかったのだと思います。都会じゃ時間の流れは均一です。でも、ここでは風が生き物のように振る舞ってましたし、暑さも暗さもまったりさ加減も心地よかったですから。


【関連リンク】
・リビングワールドの仕事展 「窓」  7/23〜8/25
展覧会についてはリビングワールドのHPをご覧下さい。
・会場のSTARNET
益子町ホームページ

【お節介かもしれませんが】
この展覧会はまず明るいうちにひと通り見て、夜の「風灯」を見に、もう一度訪れましょう。周辺に時間を潰す場所はいくらでもあります。スターネットのカフェで食事かお茶をしたり、近く温泉でひと風呂浴びたり、濱田庄司ゆかりの場所を見に行ったり、陶器のお買い物したり、サクッと歩いていける距離にある内藤廣設計の宿泊施設フォレスト益子を見に行ったりできます。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-08-15 18:49 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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