藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
ポジショニング
どんなに個性的な表現でも、どんなに超絶技巧の作品でも、どんなに斬新な切り口でも、自分が作ったものが、歴史という縦軸、同時代性での横軸の上で、どこに位置しているかというポジショニング感覚がないと、一発芸で消費されるか、セルフコピーの繰り返しで生き延びることになっていまう。

いつでも創造的な姿勢を貫きとおすためには、それぞれの表現分野の歴史はもちろん、関連するさまざまな分野の歴史を学び、同時代の作品を知り、同時代の言説に耳を傾けて、批評的思考を習得し、感覚的でも直観的でもいいから、ポジショニングを身につける必要がある。

自分の作ったものがどういうポジションに立つのかを考えることは、社会の中での作品の存在意義、マーケットの中で位置、会社のビジネスの中での意味などを考えることといえる。つまりポジショニングはブランディングに非常に近い。組織や商品群が「何をなすかものか」を明快に整理して、外部にも内部にも浸透させていくのがブランディングだからだ。

ブランディングという言葉があまり好きじゃない人も、「歴史と同時代性のなかのポジショニングを常に考えろ」と言われれば、すっと理解できるものがあると思う。

ポジショニングとは「出口をデザインすること」でもある。自分の作品の位置を見定めることができれば、どういう人たちと一緒に仕事をすべきか、どんなマーケットに参入してそこで何をすべきか、どういう言葉を操る人たちに評してもらいたいか、どういうメディアに取り上げられたいか、といったことを見えてくるはずだからだ。

良いデザインは売れないとか、自分の作品は理解してもらえないとと嘆く人たちは、現在を見限り、同時代の様々な動きを知ろうとしなかったり、歴史を学ぶことを怠っていたり、ポジショニング感覚を磨くことに無自覚な人たちである。

やり込みや技量や切り口やコンセプトばかりを、いいだの悪いだのと評価されて、ポジショニング感覚が欠如したまま社会に出る学生が多い現状を僕は少しでも変えたいと思う。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2012-11-25 20:02
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藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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