藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
見える化
私は「見える化」という言葉はどうも好きになれない。

舌をかみそうな「ビジュアライゼーション」や専門用語っぽい「可視化」を親しみやすく表現したというこの言葉の存在意義はわかるが、ダジャレのような響きと、動詞に「化」をつける不自然さに違和感を感じてしまうのだ。

しかし、このヘンテコなやさしい語感が意味の広がりをもたらすことに最近気づいた。この意味の広がりが、現代のデザインの役割に直結する。

私は「見える化」には4つの意味があると考える。

①情報を整理し、現象や関係性などを視覚的に表現することで、直感的に理解できるようにすること。可視化やビジュアライゼーションの従来の定義。昨今ビッグデータへの注目が高まるなか、可視化技術の重要性は急速に増しつつある。

②オープン化。もともと外からは見えなかった内部を開放し見えるようにすること。反対はブラックボックス化。

③微細視。見えなかった細部が見えるようになること。一般の人には認識できないディテールを露わにしコントロールすること。デザイナーはこのためにスキルの訓練を積む。

④プロトタイピング。アイデアをかたちに出来る力。「あなたの言ったことを絵にするとこういうことでしょ」と言ってササッとスケッチを描いてしまって、「ええ、まさにこういうことですよ」と言わせてしまう力。

こんなに大事なことが詰まった言葉なのだから、なおさら「見える化」というヘンテコな言葉を使ってもらいたくないものだが……。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2013-07-30 10:58
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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