藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
デザインとアートの方法論について
デザイン思考やスペキュラティブデザインといった方法論がいかに現代アートの方法論と重なり合うか──。以下の重なり合う方法論を見ていただきたい。依頼主がいるからデザインだとか、自由な自己表現がアートだとか、単純に切り分けられる時代ではなくなっています。

1)リサーチや観察を重ねて、見えない文脈を読みとり、やるべき課題を選択する。

2)関わることで問題を引き出す→たとえば、地域社会を巻き込むプロジェクト型。エスノグラフィの方法論の導入。

3)「作り手と受け手」「作品と人」「道具・空間・環境・人」の関係性(インタクラション)を問い直す。

4)従来の受け手だった人を作品制作プロセスに積極的に巻き込む。

5)スピーディーなプロトタイピングで、多くの人とつくるプロセスを共有し検証を繰り返す。
→ちなみに、つくるプロセスの可視化や共有化は、逆に「その人」しか出来ない、交換不能の領域を浮き立たせる。結果的に創造性の秘術化とブラックボックス化を促進させ、カリスマアートディレクターやアーティストの立場は強化される。

6)既成の領域を飛び越え、コラボレーションを企てる。

7)物語を構築し、世界観を共有する仕組みづくりを行う。たとえばブランディング。

8)精密なコンセプト策定の必要性。

9)プレゼンテーション能力を磨く。→説得しないと物事は実現しない。

10)評価される場(マーケット、批評空間など)を意識した戦略づくり。

11)量産技術と量産技術の美学を使いこなす。

12)不可視なものを可視化する。

13)両立不可能のものを共存させる。

14)多様なメディアへの展開力。

15)問題解決のための手法を問題提起や批評に使う。
→叫びや怒りによって問題提起を行うのでなく、問題解決というデザイナーが得意とする手法によって問題提起をする。
→風で転がる地雷撤去ボールで世界のすべての地雷は撤去できないが、その美しい問題解決策には強烈な問題提起力がある。

では、デザインとアートとどこが違う?と問われたら、こう答えます。未来重視・未来依存。わたしたちには未来が存在する、未来は何かが変わり、きっと未来は今より良くなる、厳しい未来が来たとしても私たちは立ち向かうことが出来る、という考え方に依存しているのがデザインだ、と。

デザインの歴史は産業革命以降に始まり、未来をずっと夢見てきました。きっとビジネスは成功する、社会環境が良くなる、多くの人の生活が快適になる、と。

しかし人間の表現分野はもっと遠い過去に根ざしたものがあります。先達たちの仕事を継承することに重きを置く芸術はたくさんあります。アートは未来を考えないなんてバカなことを言おうとしているのではありません。過去の歴史に根ざして未来を考える姿勢で作品を世に問いかけるアーティストはたくさんいます。

過去に重心を置くか。未来に重心に置くか。デザインは自らの歴史が短いために、生まれてからこの方未来のほうへ重心をかけてその存在意義を主張しつづけてきました[註]。しかし、未来なんて「存在しない」ものですから、胡散臭いものにならざるを得ません。その胡散臭さを背負うのがデザインなのです。

[註]タイポグラフィやカリグラフィは産業革命以前の歴史をもち、常に歴史を参照しながら発達してきたもののため、デザイン領域の中で特殊な位置を占める。建築が他のデザイン領域と切り離されたものになっているのも、建築が人類の文明誕生以来の輝かしい歴史をもつ領域だからである。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2014-12-06 16:59
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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