藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
取り壊しの知らせ(阿佐ヶ谷住宅)
みなさん、表参道ヒルズなんか見に行っている場合じゃありません。明日行く予定ですけれど……。
6月に投稿した阿佐ヶ谷住宅の記事に、今日(2/8)阿佐ヶ谷住宅にお住まいのMOANAさんからコメントをいただきました。秋に取り壊されるそうです(注:現在、とりあえず07年春まで取り壊しは延期になっています)。噂はずっと前から聞いていました。が、実際、年を越せないと聞くと、なんとも……。前川國男展が開かれ、建築的価値の評価が高まりつつある矢先だったのに。もう1年、もう2年待てないのですか? 昭和モダニズムの理想郷を、出来るだけ多くの建築やデザインを学ぶ人たちが体で感じておくべきだから。

今の日本人は「庭」や「共用の屋外空間」の豊かさに関する感覚が欠如します。住宅メーカーは敷地いっぱいに建てるのが「いい家」だなんて売り方をしています。僕の住んでいるあたりも庭のある家がどんどん壊され、敷地いっぱいに建てられた圧迫感ある家に建て替わっています。3階建てで目一杯居住空間を増やした家がいい家だなんて僕は絶対思いません。やせ我慢して居住空間を減らして庭を作る。家は狭いけど庭が広い。てやんで、鯉とか雀とかバッタとか住みやすいだろ、ほら。って家がいい家だと、そうなってほしいです。

ヒューマンセンタードデザイン──人間中心デザインなんて言い方がありますが、了見が狭いと思いませんか。やせ我慢して庭を愉しむ。共用スペースを作る。人と環境とのつながり、人と人とのつながりを生むデザインは単純に人間中心ってわけではない。つながりのデザインは心意気ですよ、心意気。

そういう意味で、阿佐ヶ谷住宅って、外に開かれた心意気というか、気っぷの良さみたいなの感じるんです。花咲く頃になったら、訪れてみて下さい。もう会えなくなるのですから。
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建築家の「夢」だけではこんな場所は生まれません。住まう人の「愛情」とのコラボレーションです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-02-08 23:56 | コモン | Comments(11)
Commented by bonboie at 2006-02-09 08:26 x
お久しぶりです。ポーランドからです。
8月に日本に帰るのでまだ間に合いますね!是非行って来ようと
思います。結局スクラップ&ビルドの世の中なんでしょうか....。
この前wienに行ってオットーワーグナーを見てきたんですが、
絶対に残していかなくてはいけない建築があるって実感しました。
そういうのって本当に何年経ってもいいんですね。そして、その土地の人がその建築に尊敬と誇りを持ってる気がしました。郵便貯金局で働いている人たちもその空間もあってか、かっこよかったです。(もともとかっこいいのかもしれませんが笑)
僕は福井の田舎に住んでたんで庭のある家ってけっこう見れるんですが、確かにあのスペースがあるとまったりできるというか、縁側に座ってのんびりするのとか快適ですね。季節によっても変化が見れるし、子供の頃は庭で蛍も見えました。(道路工事してから川原もコンクリートになっちゃって見れなくなりましたが)全部繋がって建築なんですね~って今さらながら感じました。
来学期はイタリアに修学旅行みたいな建築巡りの課外授業があるのでめちゃくちゃ楽しみです。
Commented by Yanagimoto at 2006-02-09 17:19 x
個人的には残念なことなのですが、心のどこかでは、残せ!といってるのもエゴかもしれないと思っていたりもします。正田邸のように周囲とオーナーにもギャップがある場合もありますし、都会にある何百年も経った有名建築もまた、それ以前にそこには古い建造物があったはずですし(あれほど反対されたエッフェル塔やポンビドーも月日が文化にしてしまいました)、ここももしかしたら、前川國男を超える若手建築家の腕が発揮される場になるかもしれない。ただ、既にデフレ状態の高層住宅なんかつくる必要はないとは思います。
Commented by cabanon at 2006-02-09 22:07
bonboieさんの言うように確かに絶対残していかなくてはいけない建築はあると思います。でもYanagimotoさんの書かれているように、残せというのもエゴだったりしますよね。鉄筋コンクリートの建築は寿命があるのだし。姉歯建築より倒壊の危険のある60年代〜70年代建築は多いはず。僕は母校横浜市立蒔田小学校の珍しい「円形校舎」を残してもらいたいと思っているけれども、おそらくあの校舎も耐震強度に問題があるでしょう。無理に残せとは絶対言えない。

といっても、国家政策の問題は大きいと思います。相続税や、景気回復ためだけの規制緩和がスクラップ&ビルドを奨励している。大きなお屋敷の土地は細切れにして、マンションにして、余すことなく土地を有効活用し、お金を生み出しましょうと。アキバとかシブヤとかそうすることで面白くなる地域もある。文化も生まれる。でも、東京全体、日本全部、そうさせちゃ、いろいろ問題が起こる。メリハリをつけないと。

東京のような高速度・高密度都市の記憶をどう受け継ぐか。これは若い才能に解決を期待したい問題です。木を数本残すとか、昔のままの手すりを残すとかではない、記憶の残し方があるはず。僕はそう思ってます。
Commented by Yanagimoto at 2006-02-10 00:20 x
土地の有効活用というと表参道ヒルズ、コレド、丸ビル、恵比寿ガーデンプレイス、六ヒル、代官山アドレスなどなど、これからも防衛庁のところにもできますが商業施設はすべて同じ感じ。現にテナントもほとんど同じですよね。109みたいに1つのターゲットに集中すれば文化も生まれるのに。表参道もよっぽど裏原ブランドが全部入った方が原宿らしい感じがします。表参道ヒルズの一番寂しかったのは、中から参道側の景色が見えない事。10年ほど前、同潤会のギャラリーで展覧会をしたとき、部屋中のスローさと窓からみえる外の速さにとても東京を感じました。新しくなってもいいけどこの感覚は残して欲しかった。これがまさに藤崎さんのおっしゃる記憶の残し方でしょうか。
Commented by bonboie at 2006-02-13 11:15 x
すいませんコメントが遅れました。はじめましてYanagimotoさん。お二人のお話はレベル高くてなんてコメント書いたらいいか考えてたんですが、自分のレベルで話すと、それって部屋の模様替えと一緒な感じがします。模様替えするためにはいろんなものを捨てて新しいものを部屋に入れていって。そして最後には自分の捨てたものが何かは捨てた後は忘れてしまっていて。この忘れてしまう部分をどうにかしなくてはいけないんですね。なんとなくですが、最終的には人と人の繋がりのような気がします。それプラス何かが必要で。でも模様替えのたとえだと自分一人の話だけでスケールが小さすぎますね笑 ポンビドーが反対されてたなんて知りませんでした!
いろんなものがうつり変わっていくものなんですね。
新しいものが時間が経って前あった古いものに似てきたりしたらおもしろいかもしれませんね。

会話ってほんと大事ですね。考る場を与えてもらっていつも感謝しています。ありがとうございますm(==)m
Commented by Takahashi at 2006-02-14 01:58 x
藤崎様、はじめまして。いつも楽しみに拝見させて頂いています。去年の暮れに前川國男展に行ってきました。私は小さい頃、阿佐ヶ谷で過ごしたので、展覧会で阿佐ヶ谷テラスハウスなるものを見つけ懐かしく思いました。前川建築が私の住んでいた阿佐ヶ谷にもあったんだぁ、と思いじっくり写真を見ると、なんと!?阿佐ヶ谷テラスハウスは私が小さい頃に住んでいた家そのものだったのです。知らないうちにいつの間にか、前川建築に住んでいたとは驚きと共に何とも嬉しい事実でした。この家はその昔、祖母が買ったと聞いていたので、中々いい買い物したんだなぁ、と感心してしまいました。いまその家には私の母の弟夫婦と家を購入した祖母が住んでいます。その家は日本を代表する建築家の前川國男の建築なんだよ、と年賀状に書くと、案の定、住んでいる本人たちは知らなかったようで、しかも何か勘違いしたらしく、今度立て替えられる家を前川國男が建てると思っているということ・・・いや、建てるんじゃなくて、建てた人だから・・・私から見ても古い家だったので、立て替えの話は聞いていましたが、今年の秋なんですね。今度親戚で阿佐ヶ谷の家に集まった際は写真を撮りまくろうと思います。
Commented by cabanon at 2006-02-14 21:17
>Takahashiさん
阿佐ヶ谷住宅って、確実に建築やデザインに関心ある人を育てているのですね。やっぱりすごい空間です。
今の状態を見ると、建物的にはもう寿命かなとは正直思うけど、最期はモダニズムの夢の小さな結晶にふさわしい見送りかたをしてあげたいですね。あの場所で、人が退去してから壊すまでのちょっとでも時間があれば、イベントとか展覧会とかやってほしいなと思います。
Commented by Takahashi at 2006-02-14 22:03 x
イベントとか展覧会というのはとてもいいアイデアですね。
実現すれば私も積極的にお手伝いしたいです。
阿佐ヶ谷の住宅は状態のいいものなどは江戸東京たてもの園にある前川國男邸のように移築してもっと多くの人の目に見てもらいたい気もします。でも阿佐ヶ谷の住宅は隣の家、庭、公園とか周りの環境があることで初めて成り立つ気もします。難しいですね。

あと、「ジャパンデザイン」のトークセッション聞きにいきます。
藤崎様のタクトさばきを楽しみにしています。
Commented by cabanon at 2006-02-14 22:30
>Takahashiさん
トークセッション来て頂けるとはうれしい!!
声かけて下さいね。
Commented by MOANA at 2006-03-03 01:21 x
やせ我慢して居住空間を減らして庭を作る。家は狭いけど庭が広い。てやんで、鯉とか雀とかバッタとか住みやすいだろ、ほら。って家がいい家だと、そうなってほしいです。

全く同感です!

紹介していただいてありがとうございます。今日 気がつきました。
Commented by cabanon at 2006-03-06 14:26
>MOANAさん
阿佐ヶ谷住宅の今後、このブログでもう少し追っかけていくことにします。
具体的なことは未定ですが、まずはモゾモゾと地下で動きはじめます。
もし何かあったらぜひご協力をお願いします。
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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