藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
縁/インターフェース
エンってフチです。ヘリでもあります。
漢字で書くと、縁。
「素晴らしい縁ですね」と2つ前の投稿にtoshiさんからコメントをいただき、そんなこと思いました。
僕はわざと誤読します。「素晴らしい縁(フチ)ですね」と。フチはインターフェースですから。このブログを僕はフチにしたいんです。そういえばこの前インタビューした山中俊治さんはリーディング・エッジ・デザインのエッジは最先端でもあるけど縁(ヘリ)だともおっしゃってました。
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昨年秋に龍安寺に行きました。高校生の時以来。確かめたいことがあったからです。
龍安寺の石庭の本質はフチにあるんじゃないか。たおやかな流れを映す白砂。15個あるのにどこから見ても14個しか見えない石。それに気をとられると大事なものが見えなくなる。この石庭の力はきっと壁にあるんじゃないか。それをこの眼で確認したかったのです。
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そんなことを思い付いたのは、京都行の1週前、五浦の岡倉天心の旧邸の縁側でなんの変哲もないボーっと庭を眺めていた時です(上の写真)。きれいに掃かれた白茶けた土のまわりを囲む草がなんとも美しかった。特別手入れされた植栽でもなんでもないのに。そうか、空って縁(フチ)を際立たせるんだって思ったのです。
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たしかに龍安寺石庭のフチは得も言われぬ味わいを持っています。雨だれの滲みが時そのものの壁、さまざまな黒が光を吸い込む油土塀の屋根。塀に覆い被さる木々のボリューム感。縁台と白砂との間の構成的な石組み、それらすべてがこの神秘的な庭を引き立てます。

龍安寺には、静寂はありませんでした。午前中で修学旅行生や観光客が入れ替わり立ち替わり出入りする。座り込みじっくりものを考えてる人、ガイドの説明に耳を傾けている人、シャッターを切る人、庭を鑑賞するというよりは脚を伸ばして休んでるだけの人。
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そこがもっとも活性化している「フチ」だったのです。縁側。いやこの庭の場合、縁台と言ったほうがいいのでしょうか。そこが人と庭を結びつけ、瞑想を促し思念を巡らせ発想を得る場となっています。
エンとかフチとかきっとどこかで誰かがすでに語っていることかもしれません。でも、龍安寺に再訪して、ようやくこの当たり前の真理に自分の力で辿り着くことができた、という気がしました。縁(エン)を生むのが縁(フチ)。現代風に言えばインターフェースです。縁側のない龍安寺石庭は考えられません。この庭は鑑賞者がいて初めて成り立つようにできています。縁側が瞑想を誘うのです。白砂と石は悟りのドアを開くためのスイッチでしかありません。「ああこれが教科書で見たやつか」とか「周りはうるさいけどジッと石を眺めてたら何かが見えるかも」といった観光客のたくさんの思いがパチパチと高速で行き来するこの縁側では、まさに「界面活性化現象」が起きていました。
優れた「空」は素晴らしき縁(エン/フチ)を創り出し、化学反応を生む。
余白とインターフェースの関係も見えてきます。それはまたいずれ書きます。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-02-27 12:10 | Comments(2)
Commented by のんべぇ at 2006-09-07 23:11 x
この庭ってホックニーの写真コラージュの所とは違うでしょうか?
たしかこんな景色だった記憶があるのだが。。。

本棚までたどり着けないので(片付けていないので)、確認できねぇ。
Commented by cabanon at 2006-09-08 00:59
さすが! er**iさんが「そうなのよ」と言ってホックニーの作品集を引っ張り出してきました。1983年に「龍安寺を歩く」という写真コラージュを作ってますね。たくさんの時間と視点が同時に存在する、この庭の撮り方としては最適の方法かもしれません。
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藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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