藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
偶然、ロボット発表会へ
4月3日(月曜日)の話しです。

ようやく少し時間的な余裕ができたので、恵比寿のカッシーナ・イクスシーに借りていた商品を返却しに行きました。宅急便でもよかったのですが、天気もいいし、ワレモノだし、代官山にも用事があったし、散歩気分で出掛けました。
たまたま、カッシーナ・イクスシーの地下の貸しホールで、スピーシーズが開発したロボット「ITR」の発表会をやっていました。「世界初、わが家に棲みつく人型ロボット」。何なんだろう? 名刺も持ってなかったけど、受付で事情を話し会場へ。
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新聞社やTV局も来てていました。ロボットは高さ33センチ卓上サイズです。この大きさの二足歩行のロボットで踊ったり話したりするものは、今やそんな珍しいものではありません。

じゃあ何が新しいかというと、「第5のメディア」だというのです。ラジオ、テレビ、パソコン、携帯電話に続くメディアということ。出来る限り人に近い知性や運動能力をもったロボットを開発する発想でなく、ロボットを動いてしゃべる端末として利用するという発想です。「モーションブラウザ」と説明していました。InternetExploreのような通常のウェブブラウザはインターネット上の情報をディスプレイを通して写真や文字で閲覧するのですが、ITRではロボットを通して動きや音声で情報を閲覧するからです。
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携帯端末の「番組」を選択をする画面

ロボットが歌ったり踊ったり、英会話の教師になったり、ロボットが問いかけるクイズにマルかバツかで答えたり、落語をしたり……そんなコンテンツが「番組」です。

番組ですから基本的に内容は毎日変わることを前提にしています。番組選びは携帯電話でメニューを見ながら行い、選んだ番組コンテンツがインターネット上のサーバーからロボットへダウンロードします。

ふーむ、確かに面白い発想です。今までのロボットビジネスは「知性ある人形」としてロボットを売ろうとしてきたのですが、ITRのビジネスモデルはロボットをメディアの端末として広めていくものです。製造業型のビジネスでなくメディアビジネスなのです。mediaの単数形、mediumには霊媒師という意味があります。ITRは「世界初、わが家に棲みつくロボット霊媒師」と言ったほうがいいかもしれません。

しかし冷静に考えると──、誰がリビングのテーブルの上でロボットが踊っているのを見て楽しむのだろうのだろうか。たとえ日替わりダンスだとしても。ユーザー像が見えません。それに、立ちながら首や手などを話しの内容と関係なく動かすだけで落語と言われたら、落語家はきっと怒るでしょう。彼らにとって仕草も話芸のうちなのですから。

いっそ霊媒師なのだから占いに徹したほうがいいかもしれません。細木×子とかドクター×パとかが次々と降臨する。派手な動きで幸運を表現したり、意味深に仕草で深刻なこと言ったり。スターマンロボットというのもいいかも。今年9月上旬発売予定。予定価格は190,000円。

世界初と言うのだからこのありきたりな外装デザインは変更した方がいいと思います。かわいい系に徹してペット型にするのも手です。

技術が先行してコンテンツは後から考えましょうでは、インターネット冷蔵庫のようになる危険があります。あれだって冷蔵庫のドアについた小型ディスプレイでレシピの載ったホームページを見て主婦が料理しますとか「?」と思うようなことを平気で提案していましたし。キラーコンテンツをしっかり考えて世に問うべき。発想は面白いので頑張ってもらいたいものです。

【関連リンク】ITRの詳細はこちらで。スピーシーズのウェブサイト
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-04-05 23:47 | Comments(2)
Commented by ばんぶっち at 2006-04-06 20:51 x
へぇ~、おもしろいけど売れるのかね。
少なくともワタシは買わないな。可愛くないもん。

そうそう、ワタシも今日
「あの扉にディスプレイのついた冷蔵庫ってどうなったんだろう?
使ってる人いるんだろうか?」
とふと思ったのよ。なんか偶然。
Commented by cabanon at 2006-04-07 02:09
>ばんぶっち さん
だいたい、このロボットのデザインってアニメに出てくる戦闘用ロボットのイメージで、いくら平和を守るために闘うロボットだとしても、平穏じゃないんだよね。だから癒しのイメージじゃない。ウルトラマンが何とか音頭とか踊る違和感がどうしてもある。
家庭で使うならカワイクしなくちゃね。

ディスプレイ付き冷蔵庫もしんどいよね。紙貼りゃいい話だし。貼るのがオシャレだったりする。中身を管理するとかも台所に立たない人の発想。中見りゃいいじゃん。賞味期限とか管理するとかいうけど、賞味期限切れをいかに食べるか調理するかが、人の知恵なんだし。
ま、でも、未来の先のほうに重心が偏りすぎて、ヘンな提案、好きだから取材するのは楽しんだけど。
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藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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