藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
わかりやすさ
むずかしいことをわかりやすく。

ライターとして常に心がけていることです。しかし、難解なことがなんでも簡単に語れる、と考える人たちには、強い違和感を覚えます。

「複雑 → シンプル」と「難しい → わかりやすい」は同じものではありません。

難しい思考を繰り返さないと先に進めないことはたくさんあります。
相対性理論やひも理論は、宇宙の仕組みを一般の人たちにわかりやすく説明する思いから生まれたものではありません。難解な数式を駆使して、宇宙の複雑な事象をシンプルな理論に統合する意志の中から生まれたものです。

「複雑 → シンプル」は、科学でもデザインでも基本です。科学者が複雑な事象をe=mc2のようなシンプルな方程式で説明することや、デザイナーがさまざまな矛盾する条件や制約をシンプルなコンセプトやシンプルな形にまとめあげること ── そこに美学が生まれます。科学の世界ではそれを「エレガンス」と表現します。

難しいことをわかりやすく語ることは、耳を傾けてくれる人への「礼儀」であり「思いやり」であり、なるべく遠くまで声を届かせたいという「欲望」であったりします。しかしエレガンスとは別次元の問題です。
未踏の地を目指す者は、難しいことを難しいものとして全面的に受け入れる覚悟と知恵がなければ、先に進めません。

わかりやすさや思いやりだけでは解決できない問題があるのです。たとえばパレスチナ問題を「5分でわかる!」と題して語って、どうなるというのでしょう。

複雑さに挑まねばならない時に、難解なものに背を向け、わかりやすいものだけを手元に引き寄せることは、思考の停止を呼び起こします。わかりやすければすべて良しとは、デザインの思考を深める発想でなく、モノを売りたい人の発想です。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-08-20 18:09 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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