藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
PINK
PINKは赤と白の間の色です。

青と白の間は水色ですが、水色は「青い」と言ってしまえます。淡緑も萌葱も緑の属性の一部。薄紫は紫の一部です。

黄と白の間はクリーム、茶と白の間はベージュです。広く使われている人気ある色ですが、色としての個性は薄く、周囲との調和の媒介になる色として使われます。色としての象徴性はPINKに遠く及びません。

赤と白の間のPINKだけが、原色に匹敵する個性と象徴性を持っています。

黒と白の間のグレイは、PINK同様、黒からも白からも独立した個性を持っています。しかし、グレイを「色」と呼ぶか、「色彩の欠如」と考えるか、は意見が分かれるところです。

白は合理主義の色です。1920〜30年代のモダニズム建築の色です。脳みその色でもあります。
赤は血の色です。情熱や感情の色です。
その間に存在するPINKは、私たちの体の中の色です。理性も感情もPINKの中に包み込まれています。黒人も白人も黄色人種も、体を切り裂けばPINKです。桜、桃、薔薇、しあわせ、エロス、子供っぽさ、女性らしさといったさまざまなイメージを持ちながら、実は人間にとってこれほど普遍性を持った色はないのです。

岡崎京子の『pink』を久々に読み返しました。ありのままに、体の中の色のように生きてきて、いろんなヤな出来事の末、いつの間にか、性の記号としてのPINKと同化し、つまりOLしながら売春して家ではワニといっしょ暮らして、でも、それが妙に心地よく……という女性の話です。PINKが都市をふわりふわりと彷徨いつづけるのです。口紅の色もPINK、肉体の色もPINK。商品化された欲望も狂おしく体を駆り立てる欲望も、大人の分別も子どものイノセンスな心も、お金も愛も、すべてを平等に包み込んでくれる色──それがきっとPINKなんです。

* 僕のPINKの論考の大部分は、アーティストの笠原恵実子から教えてもらったことを、勝手に膨らませたものです。

**赤と白は弁証法で言うところの、どちらがテーゼでどちらがアンチテーゼというものではありません。だからPINKはジンテーゼではありません。その間にあるもの。赤と白を混ぜ合わせたら、そこにもうひとつの世界が開けていたのです。それが「三項目」です。否定の否定でなく、そこにすでにあるもの。ありうべきものとして存在する矛盾です。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-10-03 22:16 | 二項対立 | Comments(2)
Commented by ハイファ at 2007-05-12 11:16 x
そうか・・・。PINKも感覚的に独立してしまってますね。
ところでオレンジはどうでしょう?
私はオレンジが好きなのですが、これも赤と黄との間の色だと思うのですが、どちらに入れても違和感があります。
ま、個人的な感覚かも知れませんが。
Commented by cabanon at 2007-05-12 11:53
>ハイファさん

そうですね。オレンジ。
赤とも黄とも確かに言えないけれど、
陽気で明るくて幸せな感じは、
ちょうど赤と黄色の「いいとこどり」という感じがします。

サッカーのイエローカード、レッドカードや信号機のように
黄色も赤も警告の色で、「危険」を表しますが、
オレンジは警告などで使われることがない。

黄色の太陽をたっぷり浴びた明るさと、
赤の情熱性がまじりあっている感じ。

やっぱ「いいとこどり」の色。
だから多くの人に好かれるんだと思います。
でも、PINKの独立性とは少し違うように思います。
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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