藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
大橋晃朗展
ギャラリー間で開催されている「タッチストン 大橋晃朗の家具」展(〜11/18)、とてもよかったです。是非、足を運んでみてください。
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僕にとって大橋晃朗(おおはし・てるあき/1938〜1992)さんは思い出深い人です。1986年美術出版社に入社して『デザインの現場』編集部に配属され、最初の号で上司に連れられて取材に行ったのが大橋さんでした。いただいた原稿は、デザインに関してほとんど知識がない新入社員の僕にとってチンプンカンプンなものでした。今は少し理解できます。
皮膜は家具をいっきょに官能や快楽という人間の身体に揺れ動く、非定形的なところまで膨らんでゆくように思われるのです。家具は身体をどう置くか、あるいは身体のある場所全体をどう眺めているかという、身体のありようへの感性を根元にしています。(デザインの現場86年6月号)
建築の自律した内なる皮膜──それが大橋さんの後期の家具群だと思います。人の身体はあいまいでうつろいやすく、規律や道徳と、官能と快楽の間を行ったり来たりして、時にはなはだ非合理に振る舞います。建築が、そうした理性と感情と気分と欲望が入り交じる身体と真っ向から接し合う場所を欲するとき、そこに「家具」が立ち現れるのです。
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『デザインの現場』の大橋さんの記事。椅子はハンナンチェア


多くの建築家にとって、骨格と皮膜という二項対立を語る時、その皮膜は外皮であって、内臓の皮膜ではありません。「ハンナンチェア」に代表される大橋さんの後期の椅子は内なる皮膜です。人間と建築の間を繋ぎながら自律的に作動するインターフェースと言っていいでしょう。
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「ハンナンチェア」は鉄管でできたフレームに布皮膜を張り、座部はクッションを笑点の座布団状態にただ積み重ねているだけです。ここでは骨組みも皮膜化されています。20世紀デザインの名作椅子と呼ばれるものの多くは、たとえばキャンティレバーなど最新の構造を使い、先端の建築の流行や実験を家具で実現した、いわば建築のミニチュア版と言えるものです。しかし大橋さんは、家具を皮膜化することで、家具を小さな建築として見る視点から解放し、建築と身体のインターフェースとしての家具という方向性を示しました。
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インターフェースということは、建築の鏡であると同時に、身体の鏡でもあります。ですから「ハンナンチェア」が華やげば華やぐほど、そこに翳りが生まれます。エロスはタナトスと隣り合います。家具が人間の身体に近づき、同化し、その官能性をはっきりと映し出せば出すほど、そこに祝祭の終わり──死を感じさせるものになることは、倉俣史朗の「ミス・ブランチ」と同様です。二人が同じ頃亡くなったからというわけではありません。本質的に何か共通しているところがあると思います。
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昨日映画「太陽」を観ました。昭和天皇を素晴らしく演じたイッセー尾形が大橋さんになんとなく似ていました。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-10-21 23:33 | Comments(2)
Commented by oreo at 2006-11-13 22:53 x
初めまして、初めてコメントさせていただきます。
2ヶ月前から、ちょこちょことブログ覗かせてもらってます。

私も先月ギャラ間に足を運び、大橋晃朗さんの作品を拝見しました。
大橋晃朗さんをこの展示会で初めて知ったのですが、非常に楽しむことができました。次はしっかり予習してから行きたいものですw

もしオススメのギャラリーや展示会がありましたら教えて下さい!
また今回のようなギャラリーレポ、これからも楽しみにしていますw
Commented by cabanon at 2006-11-14 08:49
>oreoさま
コメントありがとうございます。
最近このブログ、ギャラリーレポート少ないですよね。僕が忙しいからなんです。去年のほうが展覧会の記事をよく書いていたような気がします。

展覧会の会期中にレビューをアップして、みなさんの展覧会回りに役立てたらと思っているのですが、言うは易く行うは難し、ですね。でも、焦らずマイペースに気になる展覧会は取り上げていきたいと思ってます。今後とも宜しくお願いいたします。
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藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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