藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
反響
金曜日、朝日新聞夕刊(首都圏版)に「限定品」についてコラムを書いたら、父からメールが来た。「今回は内容も文体も少し専門的でしたね」。ううぅ、そんなつもりはないのだが。

そのあと、具体的な質問が2つ書かれていました。どう答えるか。わかりやすく書くのが難しい。以下、昨日返信したメールの一部です。

*****

Q 「ブランドの価値観を共有する」ということは、ルイヴィトンのバックを皆が持って喜ぶということですか?

A そういうことです。ルイ ヴィトンのバッグを買うということは、単に品質の高いバッグを買うことではなく、ブランドが提供する世界に参加するチケットを買うようなものですから。
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Q また、「ものづくりから始まるコミュニティづくりだから」とはどういうことでしょうか。

A もはや「いいモノを作ればみんなが買ってくれる」ということは難しい時代になっています。他にもっと安くて性能が同等のモノが発売されれば、みんな、そっちを買ってしまう。その製品を買って心から喜んでもらえたり、愛着を持って使ってもらえる「状況」を生み出せないと、使い捨て以上の製品は生み出せません。

優れたオペラ歌手には、優れた聴衆と、優れた劇場が必要です。世の中に100個とか1000個しかない特別な品物を、自分の目で自信をもって選んで、同じモノを選んだ人と価値観を共有するというのは、お気に入りの歌い手を見に、ミラノ・スカラ座へ足を運ぶようなものです。そこには同じ歌い手が好きな何千という人が集まっている。そして、その歌い手と、その歌い手が好きな人にふさわしい美しい劇場がある。ものづくりは、歌手の発掘と育成。聴衆と劇場を育てていくことがコミュニティづくり。「ものづくりから始まるコミュニティづくり」とはそういうことです。

******
父親に書く文体じゃないな、と思いつつ、このまま送信しました。相変わらずエラそうなやつだと、ムッとしているでしょう。

メールの最後に有り難い言葉が添えてありました。
「終りに苦言を一つ。酒は毎日飲むなら一日2合以上は飲まないこと」
ハイ。(返事だけはいいんだからと、子ども時から母に言われておりました)
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-01-07 17:04 | Comments(2)
Commented by toshi at 2007-01-08 01:23 x
またも興味深く読ませて頂きました。
この、コミュニティのデザインってすごい大事ですよね。
目に見えない環境を整える事が、
結果的に何かを生み出すきっかけになるんでしょう。
ちょっとエンツォ・マーリ史の地場産業との取り組みや、
ナガオカケンメイさんなどを思い出しました。
Commented by cabanon at 2007-01-08 12:55
>toshi さん
ものづくりを「物体づくり」で終わらないようにしないといけないと思っています。日本語の「もの」というのは不思議な言葉で、「ものを考える」とか「物知り」とか「もののけ」とか、物体以外の意味もある。

ものづくりの「もの」を、「つながり」とか「価値観」という意味まで拡大して考えれば、デザイナーの仕事も、製品や空間などの形あるもののデザインだけでなく、コミュニティのデザインまで自然に広がってくると思います。

ナガオカさんの仕事などはまさにそれですね。モノは作ってないけど、ものづくりなんですよね。
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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