藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
図工と美術
目黒区美術館へ「めぐろの子どもたち」展(〜1/28)を見に行きました。区内の幼稚園、小学校、中学校の子どもたちが、授業中に制作した作品を展示した展覧会です。

近くを通りかかったので、入館無料ということもあり、ふらっと立ち寄ったのですが(本当のことを言うとトイレを探してた)、これがなかなか面白かった。というより、いろいろ考えさせられました。

まず驚いたのは、小学校の図工の「なんでもあり」な世界でした。素材と色彩と形態の乱舞とでもいいましょうか。80年代の日グラ展とか昨今のGEISAIとかに似た祝祭感に満ちあふれていました。

「あっこの子、絵がうまいね」などとテクニックに感心する作品はあまり多くありません。弾けているけど弾けっぱなしでなく、ちゃんと形にまとまっている作品が選ばれているんじゃないかと推察しました。

たとえば──、
総菜用(?)の透明カップを半分に切って絵に貼り付けて、その中に人形が入っていたり(絵画という概念を平然と飛び越えてる)、思い思いのお店をつくって、みんなで商店街をつくっていたり(コラボです)、バルサでつくったロボットみたいな「木人」がいたり(レトロフューチャーじゃん)……。

子どもたちが楽しんで、絵を描いたり、ものをつくったりしているのが、作品を見るだけで実感できます。で、中には、これが小学生の絵か思わせる渋い水墨画もある。学校ごとに個性があって、教える先生がそれぞれに工夫を凝らして、子どもたちの創造力を引き出していくことがわかります。

ブルーノ・ムナーリの『ファンタジア』(いい本です)に書かれていた子どもたちの創造力を刺激する試みを思い出しました。

まず長方形の定型紙を用意し、子どもたちに好きな形に切るように言います。四角や三角、ちぎったりやぶったりした不定形、大きいの、小さいの、などさまざまな形の紙ができあがる。その中から自分が好きな紙を選んで、自由に絵を描くように指示をする。

こうすると、子どもたちが普段と違うイメージを夢中になって生み出すそうです。これまで決して絵を描こうとしなかった子どもが、絵を描いてみたいと思うようになるケースもある、とムナーリは書いています。四角い形の紙に絵を描くというお決まりの枠組みを排して、表現のための規則を自分で見つけ出させようとしているのです。

で、次に中学校の美術の展示室へ。ガラリと部屋の雰囲気が変わっていて再び驚きました。整然として寒々しい。そこには祝祭感はありません。すっかり「教育」されてしまっているのです。

写実的な自画像(自己の内面を見つめる)、抽象的な色彩構成(造形理論を学ぶ)、環境問題などをテーマにしたポスター(社会性を持った表現)、彫り物のある木製小物入れ(手作業によるものづくりの大切さを体験する)……。

展覧会に出品された作品は、選ばれたものですから、そこには教師や教育行政が何を求めているかが、よく見えてきます。

図工と美術がこんなに違うものだと思いませんでした。枠組みを取り払って創造力を刺激しようとしたのに、中学になると、枠組みの中に個々の創造力を嵌め込もうとしている。創造性がナイーブな個の中に閉じこもり、自己表現の微妙な差異が「美術」つまり「アート」だと勘違いしてしまうことの始まり……。教育って恐ろしいです。

これは目黒区だけなのか。検証するために世田谷美術館の小中学校生の作品展にも行こうと思っています。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-01-20 14:37
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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