藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
NPO (Non-profit Oshigoto)
d0039955_144056.jpg今月半ばに発売になった『世界に誇れる日本の芸術家555』(PHP新書)に執筆しました。1930年から1980年代まで、絵画、版画、グラフィックデザイン、イラスト、絵本、マンガ、アニメ、映画、写真などの分野で活躍した、平面・映像系主要作家555人を解説した小事典です。15人の筆者が分担して、1項目400字弱で作家解説をしています。僕は、27人のイラストレーターについて原稿を書いてます。

いや、これがえらく大変な仕事でした。イラストレーターに関する資料は少ないんです。桑沢やアサビの図書室や都立図書館で資料探しをしました。1項目原稿料2000円なのに、コピー代もかかるし、柳原良平と中原淳一の作品集は買っちゃうわ、風間完や南伸坊のエッセイ集を図書館で読み込んだり。

雑誌『イラストレーション』のバックナンバーにまとまった個人特集があると、ずいぶん助かりました。それと、同誌に連載した記事をまとめた『仕事場対談—和田誠と27人のイラストレーター』 (河出書房新社)が最高の資料でした。イラストレーションに携わる人、携わりたい人には、とてもタメになる本でしょう。和田誠ならでは、話の引き出し方にうっとりします。──あっ、他の本の宣伝になってしまった!

話を元に戻すと、イラストレーションの世界は、絵画やマンガや映画のように批評が確立されていないので、作品を語る言葉をいちいち自分で編み出していかなければならない。図版を入れないで、イラストレーターの仕事を解説するのは至難の業です。小事典ですから、原稿の基本はどんな仕事をしてきたかという略歴ですけれど、その間に、作品世界を解説する言葉を差し入れる。そこが難しく、面白くもあったところです。

伊坂芳太良(よしたろう)の仕事を振り返ることが出来ただけでも、僕としては大きな収穫でした。伊坂が66年から手がける紳士服のエドワーズの広告の仕事は、ホント先駆的です。ポスターやショッピングバッグだけでなく、トランプからカレンダー、マグカップなど、すべて彼の独特のイラストで埋め尽くし、二次元も三次元もメディア化してしまう。そうした意味では現代の佐藤可士和などにも通じるし、イラストとグラフィックの境界を行き来するという意味では、寄藤文平などにも通じる。そこまで詳しく、この本には書きませんでしたが……。

編集のS田さん、ご苦労様でした。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-02-23 15:10 | Comments(5)
Commented by もも at 2007-02-23 15:55 x
中原淳一ってあの画家の中原淳一ですか?
うちには中原淳一とか高畠華宵とかの画集が沢山あります。子供の頃、誕生日プレゼントは毎回画集ばかりで、それも親の好みで中原淳一とか高畠華宵とか上村松園とかばかりでした。

追伸:原稿料2000円て、、、かなり安くないですか?!学生の頃、人に頼まれて雑誌に原稿を書かせて頂いた事があるのですが、1600字くらいで当時2万ちょっとの原稿料頂きました。でも結局取材したり、取材させてくれた方へのお土産代を考えるとそんなに割に合わないですよね、。
Commented by cabanon at 2007-02-23 21:38
>ももさん
そうです。その中原淳一。彼は挿絵画家でもありますが、編集者でもあり、淑女のたしなみなどをまとめた本は、今見ると面白いですよ。中原淳一から乙女ロードの腐女子へつながる系譜を探ってみたくなりました。

たまにNPO(ノン・プロフィット・お仕事)があります。ふだんは断るようにしてます。後からギャラがこれぽっちです、とか、払えません、というのは最高に腹立たしいです。でも、やらないといけない仕事もあります。すくないギャラにさらに税金がかかるのはツライですね。
Commented by oreo at 2007-02-23 22:23 x
この本は面白そうですね、最近通勤のお供がいなくて寂しかったので買ってみようと思います!
Commented by もも at 2007-02-24 09:24 x
原稿料なんて、マテリアルな事に触れてしまって、お気を悪くされていたらゴメンナサイね、。丁度おととい通っているシナリオ学校の講師と飲みだったのですが、講師がお給料の事に不満を漏らしていたもので、。気になってしまい、。

中原淳一は親から初めてもらった誕生日プレゼントの画集だったので、彼に着目している方がいらした事が純粋に嬉しかっただけなんです♪
Commented by cabanon at 2007-02-26 02:25
>oreoさん
この本、図版が少ないので、知らない作家を知るには適していませんが、うろ覚えだった作家の略歴を再確認するという読み物としては使えると思います。

>ももさん
中原淳一の専門ショップが広尾にあります。「それいゆ」。いい店です。
http://www.junichi-nakahara.com/
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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