藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
キーストーンマーク
去年の暮れだったか、講義でCIデザインの話になり、ブリヂストンの新旧ロゴを見せて、今のロゴは右肩上がりの飛躍をシンボライズしている、いいデザインなんだ、とか話したら、学生が「いや、古いロゴのほうがいい」って話し始めて……。確かにこのキーストーンマーク、輪郭を少し整えてリデザインすれば、えらくカッコいいマークになるでしょうね。キーストーンとはアーチの頂部の要の石のこと。マークはその断面図の形だとか。1929年に生まれたデザインです。
キーストーンマーク_d0039955_20414412.jpg
現在のロゴはパオスがデザインし1984年に発表されたものです。「BS」というのは、「ばかな」とか「ウソだ」を意味するスラングのBullshitの略として使われており、しかもキーストーンのマークは建設業界でよく使われており、土木建設業と間違われるおそれもあった といった逸話がパオスのHPに紹介されています。(リニューアル前のサイトなので画像は見られません)。で、先進性、国際性、信頼性を表す今のロゴに変更された。赤い三角形は「燃える情熱」を表しているそうです。
キーストーンマーク_d0039955_2323564.jpg
けど、今見ると、イニシャルBの上昇矢印とか燃える情熱とか、バブルへ向かうイケイケだった時代を思い出して、ちょっとこっぱずかしい。「東京ラブストーリー」の鈴木保奈美の太い眉を今見るみたいな……。逆にキーストーンのドスンと落ち着いたマークのほうが、企業の信頼感や品質の安定感を表しているように見える。何がカッコよく見えるかなんてホント時代に左右されますね。時代を超えてどっちがいいかは決めがたい。バブル体験派の僕としては、80年代的な赤い情熱、右肩上がりマークをこの先もずっと守ってもらいたいです。一気に成長して世界企業を輩出したニッポンの象徴みたいなロゴですから。ミシュランのビバンダムだって、きっと一時恐ろしくカッコ悪く見えた時代を経て、誰からも愛される今に至っているはずですしね。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-03-07 21:35
<< 3D看板建築+巨大展示機械 ジャン・ヌーヴェル >>


S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

Twitterもやってます!

*当ブログの奥座敷
KoKo Annex

ライフログ
以前の記事
カテゴリ
その他のジャンル
ブログジャンル
リンクについて
当サイトはリンクフリーです。
お気軽にリンクして下さい。

本ブログの記事と写真の
無断複写・転載を固く禁じます。




Copyright 2005-2019 Keiichiro Fujisaki All rights reserved
本ブログの記事と写真の無断複写・転載を固く禁じます。