藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
主体の転換(3)左手は添えるだけ
前の投稿の続きである。
物書きにとって、物を主体にしてデザインを叙述すると、何がいいのか?
一番いいのが、人と物とのインタラクティブな関係を効果的に描写できることだ。人と物との対話だけでなく、物を通して作り手と使い手が対話できることまで語れてしまう。インタラクティブとかインタラクションデザイン、人と物とのコミュニケーションといったカタカナ語入りの固めの表現を使わないで済む。

たとえば、こうだ。今年『BRUTUS』4月15日号の特集「インテリア・キーワード260」のために、下にコピペした原稿を書いた。イタリアのデザイナー、エンツォ・マーリによるゴミ箱「イン・アテッサ」(IN ATTESA 1971年デザイン)の紹介記事だ。
日々、紙くずがゴミ箱に向かって放物線を描いています。床に散乱する失意の紙くずたち。それはあなたのせいではありません。ゴミ箱のデザイナーが悪いんです。マーリはゴミ箱をピサの斜塔のように傾けました。「どうぞこちらへ放り投げてください。スナップを利かせて」とゴミ箱が語りかけてくれます。傾斜つけるだけで今まで存在を無視されていたゴミ箱が人と対話する存在になるのです。ダネーゼのために作ったゴミ箱を通して、哲人マーリは本当のデザインとはものに尊厳を与える作業だと教えてくれます。

傾いたゴミ箱がやさしく投げる行為を誘い、そのやさしさがエンツォ・マーリとのデザイン思想との対話を促す、というわけだ。

んで、この原稿、ホントは「スナップを利かせて」って箇所に「左手は添えるだけ」と書き入れたかったけれど、あまりにアニヲタネタなので、やめときました。実際ゴミ投げるとき左手は添えないしね。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-15 19:31 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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