藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
グッドデザインのグッド
何故、グッドアート、グッドミュージック、グッドムービー、グッドポエム、グッドアーキテクチャー、グッドアニメといった言い方がないのに、“グッドデザイン”だけがありなのだろうか。

倫理を語るのに倫理的である必要はない。
道徳を論ずるのに道徳的である必要はない。

なぜなら、あまりで倫理的・道徳的でありすぎることは、ひとつの社会の規準でしか物が見えなくなることに他ならない。神に忠誠を誓う道徳な人間が平気で異教徒を殺す場面を歴史は何度繰り返してきたことか。

デザインの世界の精神基盤は、アートの世界よりも工学の世界に近い。“グッドデザイン”と“良い技術”は重なり合う。

工学者(エンジニア)は“良い技術”を生み出さなければならない。工学者は、人が良いか悪いかまだはっきり判断できない時代の最先端を行く技術を扱うのだから、一般の人よりも高い倫理観・道徳観を持っていなくてはならない。倫理観が欠如していると社会にとって害悪の技術を生み出してしまう可能がある。工学者は社会に役に立つ技術を生み出さなくてはならないのだ。人類の発展に寄与する技術を、国家のためになる技術を、企業にとってもお客様にとって良い技術を……。“技術”を“デザイン”に置き換えて考えれば、良い技術とグッドデザインの相似性が理解できるだろう。

デザイナーも工学者同様、倫理に対して敏感でなくてはならない。僕はユニバーサルデザインや環境に配慮したデザインを否定するわけではない。それは現代社会に必須のデザインの考え方だ。

しかし、「グッドであること」にこだわるだけでは、美術も文学も映画もあまりに表現が乏しくなることを忘れてはならない。建築をグッド/バッドで評価しないのは、建築は工学であるとともに芸術だと考えられているからだ。デザインもそうなのに……。建築には大文字のArchitectureというのはあるけど、デザインには大文字のDesignというのがない。

倫理をテーマにしながら「グッドデザインとか言ってもらいたくないぜ」とガツンと言い切れるラディカルなデザイナーの出現が待ち遠しい。

オリヴィエーロ・トスカーニのベネトンの広告キャンペーンのように。



Ph Ewa-Marie Rundquist
d0039955_2358261.gif


World AIDS Day
Pl. de la Concorde Paris
December 1, 1993
1993年12月1日「国際エイズデー」パリのコンコルド広場にて。

www.benettongroup.com
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-16 21:44 | Comments(2)
Commented by knsout at 2005-09-05 23:19 x
そう、デザインはグッド/バッドではない、そんなことに気付いたのは最近です。「作品の強度」なのですね。
「作品の強度」はそれを受け取る側もその強度を受け取る力がないと単なる差異の認知に終わってしまうと思います。それ自体なんら悪いことでは無いと思いますが、自身の力を貯えていろんな「作品の強度」を楽しみたい、そう思ったりしています。
Commented by cabanon at 2005-09-06 15:08
僕の好きな言葉に「偶然は準備のある心にだけ訪れる」というのがあります。
作品との出会いにも言えると思います。
<< 主体の転換(4)バラが光る。 覚醒は訪れない >>


S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

Twitterもやってます!

*当ブログの奥座敷
KoKo Annex

ライフログ
最新のコメント
以前の記事
カテゴリ
ブログジャンル
リンクについて
当サイトはリンクフリーです。
お気軽にリンクして下さい。

本ブログの記事と写真の
無断複写・転載を固く禁じます。




Copyright 2005-2016 Keiichiro Fujisaki All rights reserved
本ブログの記事と写真の無断複写・転載を固く禁じます。