藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
くぼみ傘
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先々週の木曜日、表参道で雨に降られて、深澤直人さんデザインの±0の傘を買いました。講義でこの窪みの話をよくするので、突然の雨に「そうだ±0のショップが近いし、やっぱり自分で使ってみなくちゃ」と思ったわけです。使い勝手はいい……というか極めて「ふつう」です。それが狙いだということはわかっています。ワンタッチ機構もありません。

4200円はやはり高いと思いました。素材感に特別さがないため、傘本体に1000円、窪みに3200円払っているような感じです。たしかに柄に付いた窪みは楽しいです。握っていると窪みをつい親指でクリクリいじる。まだ窪みに買い物袋を無意識のうちに掛けて交差点で信号待ちするって行為まではアフォードされていません。雨がやんでレジ袋を持っているという状況が訪れてくれないので。

色がとてもいい。地味な色ですが、いやいや、そんなことはない。明るいのです。柔らかい光が透過して、洋服の色が映えます。じめっとした季節にはこの明るさがうれしい。

ただし、父の日や母の日のプレゼント──もうとっくに過ぎてしまいましたが──にするには、この窪みの楽しみは微妙すぎますね。「環境側に情報が埋め込まれていて、モノが行為を誘発するっていうのがアフォーダンス。この窪みがその典型例さ」っと説いても、分からない人にはさっぱりでしょう。それより高級感のある柄や生地を使った傘のほうがいいって話になる。といっても、高級な傘はもっと高価です。

大事に使いたいと思います。いつかこの窪みが思いもしない使い方をアフォードして(与えて)くれるかもしれません。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-06-26 17:12 | Comments(6)
Commented by at 2007-06-26 19:32 x
いつも楽しく読ませていただいてます。

私は友達にもらいました。
「あんな使い方はしないだろう...」と思ってましたが、先日電車でやりました。

電車に乗るとき傘はたたむし、少しの間“立ち止まって”います。
使用シーンとしては、「信号待ち」より「電車」の方が良かったかも知れませんね。

これからもしがらみのないデザイン観をっ。 笑
Commented by cabanon at 2007-06-26 21:21
> ㎡ さん
うんうん、電車に乗るときのほうが現実的ですね。
思わず手提げ袋を窪みにかけてしまう「瞬間」がやってくることを
楽しみにしています。
ま、ここまで書くと必ず意識的にやりそうですが、、、。
Commented by おやつ at 2007-06-27 20:04 x
実物は見たことないのですが、写真で見る限り、パーティングラインを消してあるように見えます…。このお値段はそのせいでしょうかねえ。
僕だったら、立ち止まってるとき、掌の中心(ツボ?)をくぼみのカドにぎゅうう…っと押し付けてぐりぐりしてそうです。

そんなん、僕だけかなあ〜。

くぼみを親指でくりくりし続けて年期が入ったら、くぼみがテカテカになって、きれいかもですね。
Commented by cabanon at 2007-06-27 21:24
>おやつさん
たしかに見事に型の接合の痕跡、バリとか型抜きあとの穴とか存在しません。
そのあたりにお金がかかるんですね。
でも今よく見たら、もう柄に3カ所くらい傷がついてました。
飲み屋で座席の下に倒して置いていたせいでしょう。
パーティングラインを消すのにコストを掛けるなら、
傷つきにくい材質を選んでほしかった。

ぐりぐり感はいいですよ。どうせなら柄の部分だけを、いろんな傘に付け替えられるようにしてほしいと思いました。
ビニール傘を買って、柄の部分だけ交換するとか。
そんな傘の使い方、誰か提案してくれないかな。
Commented by y_and_r_d at 2007-06-28 00:40
こんばんわ。
その窪みを意識していることで
充分機能しているようにも感じます。
親指でそっと押したような曲面に一度触ってみたいですね。
Commented by cabanon at 2007-06-28 10:52
> y_and_r_d さん
サワサワしたくなって、なんやかんやで、
愛着の沸いてくるくぼみです。
そういう意味ではちゃんと機能してますね。
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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