藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
横須賀美術館へ
日曜日に横須賀美術館に行きました。眺めのいい美術館です。対岸に新日鐵 君津製鉄所が見えました。鉄つながりです。鉄とガラスでつくられた美術館は軽くて透明。製鉄所は重厚長大。環境音楽とヘビーメタルと海を隔てて向き合っているような、そんな感じです。
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鉄っておもしろい素材です。鉄の意志とか鉄人とか、一般的には重たくて硬くて確固たるものの代表のような存在ですが、建築の世界では決してそうじゃない。建築では重い硬いといえば石であって、鉄は軽くて柔らかい素材として扱われる。

たとえば、安藤さんは21_21デザインサイトで鉄板の屋根を「一枚の布」に見立ていましたし、フラードームは風船のような軽やかさがあります。古くはアールヌーヴォーの建築家ヴィクトール・オルタの蔦のようにうねる鋳鉄を思い浮かべてもいいかもしれません。
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横須賀美術館の設計は山本理顕設計工場。最大の建築的特長はダブルスキン──二重膜です。箱形のガラスと鉄骨の外部膜の中に、白く塗られた鉄板の内部膜が入れ子状に入っています。鉄板の膜のところどころに丸い穴が開いていて、細胞膜が呼吸をするように自然光を採り入れます。二重膜は塩害から作品を守る防壁でもあります。“建築における鉄らしさ”を究めると、内部を守りながら、外部と呼吸しつづける、柔らかな膜となる、ということでしょうか。

でも、その鉄は、製鉄所の高炉から生み出されます。そこは圧倒的な存在感があり、重厚長大から逃れることはできません。21世紀、さらに鉄は物質感のない軽い素材として扱われるのか。それとも重厚さやひんやりした触感といった物質感が、再び脚光を浴びるのか。“鉄らしさ”の行方が気になります。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-07-11 01:30
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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