藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
メキシコシティ地下鉄ピクトグラム
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昨日の投稿に、70年と86年2度のW杯決勝会場となったメキシコのアステカスタジアムの写真を追加しようと思い、4年前行ったメキシコの写真を探していたら、メキシコシティの地下鉄のピクトグラム(絵文字)を撮ったポジフィルムが出てきました。マラドーナが神の手を使った場でもある、あのアステカスタジアムの写真は、ひどくアンダーで構図も悪くアップするのをやめましたが、ちょうど明日、アサビで「非文字によるコミュニケーション」というテーマで授業をやるので、この地下鉄ピクトグラムの傑作を披露しようと思い、スキャンして、このブログでも話題にすることにしました。
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このピクトグラムの何がスゴイかというと、絵だけで駅名を表示しているのです。各駅ごとにピクトグラムがあり、チャプルテペック駅はバッタのマーク、バルデラス駅は大砲マーク、イザベル・ラ・カトリカ駅は船のマークとなっています。チャプルテペックとはバッタの丘という意味なので、このマークになりました。もちろん文字による駅名表示もあります。たいていは文字とピクトグラムが並置されているのですが、ピクトグラムだけの表示もある。バッタのマークだからチャプルテペック駅だと分かるわけです。車内路線図もピクトグラムのほうが文字より大きい。色は世界各国の地下鉄と同じで路線を示します、ピンクだと1号線となるわけです。写真の大砲のマークのように二色になっているのは乗換駅を示します。ピンクの1号線とカーキグリーン色の3号線が交わる駅だと示しているのです。
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1969年のデザインですが、当時メキシコには文字が読めない人が多く、1970年W杯で外国人を迎えるためにマーク中心のサイン計画にしたのです。日本では日比谷線六本木なら「H04」と無機質な記号で表示してますが、もしピクトグラムにしたらどうなるか想像すると面白い。六本木ならファロスなあの高層ビル、恵比寿はビール、広尾は病院、日比谷は公園、銀座は時計塔、東銀座は歌舞伎、築地はマグロ、八丁堀は中村主水、秋葉原はメイド、南千住は人の首……。

そんなことはどうでもいい。

デザインしたランス・ワイマンは、メキシコ五輪やワシントン国立動物園などの仕事で知られるピクトグラムデザインの第一人者です。ワイマンの実質的デビュー作で出世作、メキシコ五輪のサイン計画は素晴らしい仕事ですが、「ワイマンだけの仕事じゃない。彼は200名いたスタッフの中の一人だ。アメリカ人はマーケティング上手なんだよ」とオーガナイザーとしてメキシコ五輪のデザイン・建築を仕切った建築家ペドロ・ラミレス・バスケスが、僕がインタビューした際、苦虫を噛み潰したような顔で言ってました。
この地下鉄のピクトグラムはワイマン個人が請け負った仕事だといいます。五輪の仕事では業績独り占めと批判されても、ライマンには確実に希有な才覚があった。そのことは、この地下鉄のピクトグラムが証明しています。
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★ランス・ワイマン(Lance Wyman)の公式HPはwww.lancewyman.com

★メキシコシティの地下鉄ピクトグラムをもっと見たい方はAnswers.com内Wikipediaのこのページが詳しいです。Line1(1号線)など各線の説明の項の一番下に、駅名が並んでいて、駅名をクリックすると各駅のピクトグラムを見ることができます。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-22 23:56 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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