藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
トークを終えて
本日(31日)、AXISギャラリーのチャールズ・イームズ写真展関連企画、剣持デザイン研究所所長 松本哲夫さんとのギャラリートークにお越しくださった皆様、どうもありがとうございました。

このトークで僕の「剣持勇」観はずいぶん変わりました。モダンデザインの方法論を日本に根付かせることに全身全霊を傾けながら、同時に非合理で土俗的な何かへ引かれていく剣持勇のもうひとつの側面──それが剣持の撮った写真に現れている。松本さんの話を聞きながら、そのことに気づくことができました。

モダニズムを先導した人は、必ずしも本人が心底モダンってわけではありません。僕は何故かそうした人に惹かれます。ル・コルビュジエ、チャールズ・イームズ、ルイス・バラガン、エットレ・ソットサス……。「非合理な何か」がひょっこり作品に現れます。いつもじゃありません。

イームズの写真も剣持の写真も、基本的にはモダンデザイナーの眼です。対称や非対称を意識したグラフィカルな構図、大胆なトリミング、強い色彩のコントラスト、素材の面白さを捉える視線、アノニマスなものへの眼差しなどなど。しかし、中に何かモダンとは違う異物が混入している。混入の仕方がイームズと剣持では明らかに違う。剣持のほうがちょっとドロッとしてました。写真は明らかにイームズのほうがうまい。何気ないけど構図に隙がない。けど問題は何を見つめていたかです。何かを捉えようとしていたかです。デザインの仕事ではほとんど現れることのない「何か」が、写真に現れているのです。シャッターを押すときの、視線の向こうと視線の奥のシンクロニシティ……。

今日は、聞きたいことを聞きました。僕はえらく満足してます。聞いている方のことをあまり考えませんでした。固有名詞が説明なくどんどん飛び出して、少々不親切だったことお詫びします。コンラート・ワックスマンって誰って思いますよね。

でも、1950年代の時代の脈動のようなものを感じてもらえたと思います。アートもデザインも建築も渾然一体となって、日本の伝統と世界の最先端を重ね合わせ、未来を創造したあの時代──。

あの脈動をもう一度蘇らせたいと思ってます。けれども21世紀は、明らかに20世紀半ばより難しい問題を解決しなければなりません。ゼロから成長するのでなく、豊かなところから変わらないといけないのですから。生きのびるために、僕たちは過去の鼓動にも耳を傾ける必要があります。

何のためのデザインなのか。1960年代後半あたりから、手段(デザイン)が目的になり、不整脈が起こり始めます、「ある人たち」はそれを感じていました。少し唐突ですが、僕には三島由紀夫の死と剣持の死が重なり合います。何かが変わったあの時代には、21世紀人へのメッセージがあると思います。そうした見方を教えてくれたのは、先日取材をしたアーティストの柳幸典さん。犬島アートプロジェクトの柳さんの作品は、三島を題材にして、手段(経済成長)が目的なってしまった近代日本をテーマにしていました。

きっと私たちは今変わらないと、次の世紀が確実に見えなくなる。ジョージ・ネルソンが、イサム・ノグチが、猪熊弦一郎が、と、いささかマニアックな質問を繰り返しながら、実はそんなこと強く感じていたトークでした。貴重なお話をしてくださった松本先生、素晴らしい機会を設けてくださったAXISギャラリーの方、本当にありがとうございました。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-05-31 22:58 | Comments(4)
Commented by ハタ at 2008-06-01 23:16 x
昨日は、素敵な催しをありがとうございました。
ご近所のエディトリアルデザイナーです。本日も仕事です(笑)

松本さんのお話を聞いていて、月並みですがいろいろと体験されてこられた方の話は言葉にリアリティがあるなあ、ということと話題の幅が広いということを強く感じました。
いろんなこと知っていて、しかも言葉に説得力がある。
こればかりは一朝一夕では追いつかないので私も地道に勉強しようとおもいました。

また、剣持さんのスライドを見ていて、歳のせいか? 何度かぐっときてしまう瞬間がありました。
剣持さんの写真には、気持ちがものすごく投影されている気がして、あ、こういう場面がいいって思ったんだなあ、って思うとなんだか切ない気持ちになってしまいました。
ざるそばの写真とか、なんてことない風景なんですけどね。
この人、確かに生きてたんだな、という感じというか。うまく言えませんが…。

忙しい仕事の合間でしたが、行ってよかったです。
Commented by cabanon at 2008-06-02 13:57
>ハタさん
土曜日はありがとうございました。
本日、OOOKA山から帰り、ビルの前通りました。
ホントわが家とえらく近所です。

うん、「確かに生きていたんだな」と感じる写真でした。
そこに「彼」はいたんだと。
世界を撮すことで自分を映す。
ファインダーを覗く人の生の痕跡が
どの写真にもにじみ出ていたように思います。

そんなこと他の人に感じてもらえるような仕事、
残せるようにしたいですね。
お互い頑張りましょう。
Commented by sasaki at 2008-06-02 15:48 x
藤崎さんこんにちは。ブログいつも楽しみにしています。ギャラリートーク目当てで行ったんですが、既に満員で入れませんでした。残念です。

猪熊弦一郎さんの話もされていたんですね。ちょうど先週、丸亀市の美術館に行ったところでした。初めて猪熊氏の作品を見たのですが、美術館自体も含めてかなり良かったです。

下のエントリーですが、本殿金堂の地下には行かれましたか?
Commented by cabanon at 2008-06-02 18:03
>sasakiさん
雨の中、せっかく足を運んでいただいたのに、
申し訳ありませんでした。

イサム・ノグチが剣持勇と猪熊弦一郎をイームズと結びつけた、
といった話を松本さんからしていただきました。
モダンデザインの発展における、
猪熊弦一郎の役割を調べるとものすごく面白そうです。
あっでもまだ僕は丸亀には行ってない。うらやましいです。

本殿地下、行きました!
ゾクッとしました。
護法魔王尊の姿は、鼻がふつうの天狗。
ふんふん、そういうことなのか、
と、ひとり納得しておりました。
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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