藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
ロバスト家電
洞爺湖サミットのせいで、都心の繁華街や駅や新幹線に警官がいっぱい、メディアはエコエコ大合唱。

クリーンエネルギーの推進やサスティナブルな社会のあり方を考える良い機会になっていると思いますが、政府の号令ひとつで同じ歌を大合唱しだす日本社会の体質には、地球温暖化以上の危険を感じます。

とはいっても、僕も最近エコ関係の取材がけっこうやってます。編集者としては「時流に乗れるときには思いっきり乗ってしまえ」という魂がうずきます。ジャーナリストとしては大合唱に参加することへの危うさを感じます。ま、相剋とか葛藤というほど思い悩んでいるわけではないのですが。やっぱり僕の中では、編集者としての職業意識のほうが強いからかもしれません。

で、この際だから、日頃思っていたエコの話をひとつ書きます。

重電部門を持つ総合電器メーカーの洗濯機は壊れてはいけない。

原子力発電のタービンや制御システムを作っている会社が製造している家庭用洗濯機が、10年で壊れてしまうことはあってはならない。毎日洗濯している家庭でもモーターが回っているのは一日1時間くらい。特別過酷な環境下で24時間フル稼働しているわけじゃないのですから。

屋外で使用しているならいざ知らず、屋内の安定した環境で、週に7〜10時間稼働するモーター製品は、少なくとも50年はもつべきです。うちのはもうキャリア20年のベテランですが、外蓋のプラスチックが劣化してボロボロです。

20年使い込むと味が出てくるくらいの洗濯機はないものでしょうか。材料が劣化するとかヒンジが壊れるとか、スイッチやボタンといった物理的な故障の回避に細心の注意を払った設計をして、流行り廃りの激しい○○機能といった○○洗いといった特殊なプログラムを組み込まず、ロバスト性(頑強さ)を高める方向の製品づくりをすれば、ロングライフな洗濯機は可能なはずです。

原子力発電の開発で培った低コスト・高ロバストの技術を家電製品にも活かしてほしい。それこそエコロジーだし、サスティナブルデザインだし、地球温暖化防止対策だと思います。

日立や東芝や三菱電機といった重電部門を持つ総合電機メーカーは、松下やシャープとは違うビジネスモデルで、家電製品の開発にあたってほしい。日本のエネルギー産業を支えている会社だからこそ実現できるロングライフ家電があるはずです。頑強な家電ということで、ロバスト家電ってネーミングもいいかもしれません。

現在の家庭はモーターがいっぱいです。CDやDVDプレイヤーのディスクを動かすモーターにトレイを動かすモーター、ミキサーやフードプロセッサー、ドライヤーやヒゲ剃り、さらにはウォシュレットのノズルにもモーターが使われています。

なかでも洗濯機、冷蔵庫、掃除機、エアコンは家庭4大モーター製品といえるでしょう。24時間稼働の冷蔵庫や、夏はどうしても長時間稼働となるエアコンは、今後の技術開発でさらに消費電力を下げて、買い換えたほうが省エネにつながることはあるでしょう。しかし洗濯機や掃除機は使う時間が限られているので、長持ちすることがサスティナブルにつながる商品です。こうした製品は「ロバスト家電」として売り出してもらいたいです。「うちのモーターは100年壊れない」と言い切って──。

もちろんエアコンも冷蔵庫も、重電部門をもつメーカーならではのブランディング戦略の一環として、ロバスト家電化してほしい。高度な技術力でロングライフデザインを実現し、サスティナブルな社会に貢献する企業ということで、確実にブランドイメージは上がるはずです。

すべての家電をみんな10年くらいで買い換えさせるビジネスモデルはそろそろ終わりにしてもらいたいです。5年で買い換えさせる製品もあれば、50年買い換え製品もあるといった柔軟なラインナップを考えるべきだと思います。

「わが家の洗濯機5年で壊れたし、冷蔵庫は3年でいかれちゃったんだけど、あの原発のタービン作ってるメーカーの製品なんだよな」って会話がないように。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-07-06 11:23 | お気に入りの過去記事
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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