藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
デザイナーは医者じゃない。
デザイナーの仕事を医者にたとえる人たちがいます。グラフィック系に多いです。間違いだと思います。仕事のプロセスを説明するための軽いたとえ話ならいいのですが、あの有名デザイナーも、この有名デザイナーも、デザイナーは医者だと、講演などで若い人たちに語るのはどうかと思います。

医者は凶悪犯罪者の命でさえ救わないといけません。それが医者の倫理です。しかしデザイナーは、姑息な手段で儲けている企業の仕事を受ける必要はありません。暴力団絡みの会社や武器商人から「ウチの会社はダメになりそうだからと看てください」と言われても、その命を救う必要はないのです。それがデザイナーの倫理です。

医者の倫理とデザイナーの倫理は「人のため、社会のため」という根本の部分では同じものですが、その実践においては決定的な違いがあります。医者は患者を選ぶことができません。それが医者の倫理です。しかしデザイナーには依頼者を選ぶことで初めて達成できる倫理があります。仕事を選んでいれば、食えない。けど、あの仕事はすべきでない。仕事を断らないとならない時があるのです。ここに勇気ある倫理が発生する。再生紙を使いました、CO2削減に貢献しました、ユニバーサルデザインを採用しましただけが、デザインの倫理ではありません。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-11-03 00:29 | お気に入りの過去記事 | Comments(3)
Commented by しずけん at 2008-11-07 06:50 x
医者は「壊れた物を元の状態に直す/治す」職業ですが、デザイナーは「物を生み出す」のですから根本的に違いますね。(もちろん、ここまで図式を単純化してしまうと色々と語弊やツッコミどころがあるのは承知の上ですが…)
治すという行為とは違い、何かを生み出すという行為には、世界に何かしらの影響を及ぼすという副作用が必ず付いて回ります。その「生み出す」という行為に一番近く直接的な立場にいるデザイナーが、このことに無自覚であってはいけませんね。
一度気付けばこれほど当たり前でこれほど重要な倫理はないのですが、無自覚なデザイナーは非常に多いと感じます。
Commented by すすむっち at 2014-02-13 12:15 x
なるほどーと思いました。

餅は餅屋という事でしょうか。
その断る線引きという部分が難しいですね。
Commented by のみやま at 2015-04-12 23:40 x
アメリカでデザイン学を学んでいる者です。
わたしも記事と似たようなことを授業の一環で考える機会があり、ビクターパパネックの「全ての人間はデザイナーである」という一節を展開して倫理についての話しを自分のブログにあげました。
一般的にいわれる倫理観というのはある一定の基準が必要になってくると思いますが、デザインの倫理はダブルスタンダードに成り得るとおもうんです。それを一つにまとめるかまとめないかは、デザイナー自身の選択であって、それを意識的に選択しているデザイナーが少ないのが問題のように思います。もしくは選択しなければならないのだと気づく機会が少ないのかもしれません。

このことを考える時にいつも思うのですが、デザイン倫理という科目をどのデザインの学校も必修にしたほうがいいと思うんです。アメリカでは少しずつその流れが強くなっていますが、日本の大学ではどうでしょうか。
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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