藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
伝わる話
人に伝わる話ができるようになるには、2つの道がある。そんなこと今日、人と話しているとき考えました。

ひとつは、しゃべりの技術を学ぶこと。話し方教室に通ったり、人の真似したり、落語を聞いたり、演劇を学んだり。とにかく人前で話す機会を増やして技術を自分で研究したり、この道の辿り方は人それぞれです。

もうひとつは、自分の中に確固たる信念を持つこと。

前者はスキルの問題です。人によって能力差はだいぶある。しかし、文章書きといっしょで、誰でも必ず上達します。ただし時間がかかります。

後者は、スキルの問題ではありません。確たる信念を持っているか否かの問題。信念に120%自信があり、それを人に伝えたいと強く望めば、うまい話し方でなくても、思いは人に伝わります。信念が常に頭の芯にあるから、原稿なしでも、話がぶれない。即興でたとえ話ができたりする。

迷いがあるから言葉が詰まる。受け売りだったり、事実をきちんと確認してなかったり、論理的な詰めが甘いなと自覚しているから、声が小さくなり、あいまいな表現になる。自信がないことを悟られてしまうことが怖い。自分が信じていないことでも、絶対的確信を持っているかのごとく話すスキルを持っていればいいのだが、残念ながらそんなワザは持ち合わせていない。相手の反応が薄いと、言葉の端々がビクビクする。

一度、話しがしどろもどろになると、回復は難しい。やっぱりしゃべるのが苦手だわと思って、また失敗する。悪循環に陥ります。しかし信念がドスンと体のど真ん中にあると、語りは熱くなり、人に何かが伝わります。伝われば、話すことが楽しくなる。しゃべる機会が増えれば、あの手この手を使って話すようになるので、結果的に、しゃべりのスキルが上達する。これはポジティブなスパイラル。信念があれば、スキルは後からついてきます。

しゃべりの技術を先に磨くのがいいのか。信念を持つ人間に先になるべきか。

昨日オバマ次期大統領の演説をテレビで観てて、なぜこの人は演説が上手いんだろうと考えました。オバマの演説は、しゃべりの技術以上に、信念を感じる。キング牧師の有名な演説もそうですよね。

あることないことをさも信念のように熱弁できるディベート技術に優れた人の演説とは違う。セールスマンのトークでもない。技術先行型ではない。信念先行型なんですよね。ブッシュはもともとしゃべりが下手で、しかも、信念がないから、ある一定以上しゃべるスキルが伸びない。日本の多くの政治家がしゃべるのが下手なのも同じことかも。

この秋くらいからか、授業で、信念を真ん中に据えて語れるようになってきたように思っています。それまでは、パワポ(僕はKeyNoteですが、ま、どっちでも)に頼り、話す技術・伝える技術のことを意識してしゃべっていたのですが、パワポに頼ると、アドリブが利かなくなります。けど技術のことより、信念を体幹の真ん中にしっかり据えると、なんか自然に言葉が口から出て来るようになってきました。まだまだ未熟ですが、何かが見えてきたような気がします。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-11-06 17:33 | Comments(2)
Commented by ごとう at 2008-11-07 10:39 x
はじめまして。

素晴らしい文章をありがとうございます。
ただで読ませて頂いたのが申し訳ないくらいです。

自分の信念を大事にしていこうと思いました。
Commented by カンノ at 2008-11-07 19:36 x
聴いているように読みました。
書かれていること、まさにその通り。
文から伝えたいことが伝わってきました。
感動してコメントしました。

以前はDAGODAありがとうございました!
いつも藤崎さんの文、楽しみにしています。
カンノfrom神戸
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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