藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
しゃべること
すごく久々にGEISAIを見に行きました。けっこう質の高い作品が多かったですが、このイベント自体が時代から少しズレはじめているようにも思いました。

「私、特別な感性を持ってます。人とのコミュニケーションは苦手です。私の感性は言葉にした瞬間に崩れてしまいます。でも、絵は上手です。写真は上手です。分かってください」系のナイーブな描き込み・作り込み作品は、嫌いじゃないのですが、でも、もうそういうものを、自己表現だとか、小さなゆるやかなコミュニティだと評価する時代じゃない。キャラクター系はドアラや、せんとくんとか、過激なものをふだん見ているので、現代美術として見てもあまりインパクトは感じないし。

21世紀ゼロ年代の終わり、わかりあえる人たちの、同じノリを共有できるコミュニティから1歩踏み出す勇気が、アーティストに限らず、すべての人に問われています。GEISAIに出展するということ自体が半歩踏み出す勇気だと思います。ですが、もうあと半歩……。「伝えたい、伝えてこの世の中の何かを少し変えたい」という思いを感じた作品はほとんどありませんでした。ネットなどの進展で、引きこもりだって社会と関わる手段があるのが現代です。セルフヌードやパンツを見せることだけが、勇気じゃないんだけどな。
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会場の片隅で行われていた東浩紀さんのゲリラトークを主宰した人たちのほうに、僕は「今」を感じました。先日見た桑沢の卒制展で、子どものための教科書をつくって、ずっと一人でプレゼンしていた人がいました。「今ネットだと死ねとか平気で書き込みますよね。この頁には『死ね』『好き』と書いてあります。どちらか好きなほうを、私の目を見て言ってみて下さい」。迫力のプレゼンでした。彼女にも、僕は「今」を感じました。伝えたいことがきちんとあって、一歩踏み出してしゃべりつづけること。しゃべる場をつくる勇気が、今、問われているように思います。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-03-09 11:27 | Comments(4)
Commented by アイ at 2009-03-10 12:04 x
ご指摘のとおりだと思いました。

まさに内輪で盛り上がってタコツボ化する集団、今そういう場が商業化でだいぶ増えてきてますよね。

言葉で説明するより「こんな感じ~」で通用できる。外が激流だったりするのでその中でぬくぬくする快適さは一度味わうとなかなか出ることができません。

そういう集団が他者を意識して自分と違う価値観の人を多く巻き込めるか、と言えばそうじゃない。お金もらってモノを作っているプロにもいます。でもメジャープロというよりマイナープロかな。ああ、もったいない。

東浩紀さんのインタビュー記事をずいぶん前にどこぞの新聞で読んだことがあって、ご本人曰く、果敢にそれらのタコツボを縦断するのがライフワークなのだそうです。この人には他分野に跨る勢いがありそうですね。

今回の記事を読みまして、この方のお話を聞いてみたくなりました。
ありがとうございます。
Commented by cabanon at 2009-03-10 19:25
>アイさん
「タコツボ縦断」というのは僕も見習わなければならない姿勢だと思いました。
ハダカを晒すな、言葉に晒されよ。
言葉は人を深く傷つけることがあるけど、
表現にそっと添えられることで
表現を強くして、
多くの人の心に届く手助けをしてくれることがあるのだから──
って思います。

Commented by dezain1 at 2009-03-11 23:45
藤崎さんどうも。おかだです。ほぼ同じ時に、別な場所で似た体験をし、同じようなことを考えておりましたところ、藤崎さんの投稿を読み、びっくりすると同時に、やはりそうか、と思っております。5月の対談がますます楽しみになって参りました。
Commented by cabanon at 2009-03-12 10:35
>岡田さま
時代が少し変わりつつあるのかもしれませんね。

金融業界の信用が崩壊して、いまの不況になって、
その余波で広告出稿が減り、雑誌が休刊したり、
テレビや新聞の経営が苦しくなっています。

そういう今だからこそ、
小さなメディアを立ち上げて、
「信用創造」をする時代だと思ってます。

あの人が言うから信用できる。
あの雑誌が書いているから間違いはない。
そういう信用をスモールメディアが獲得しうる時代です。

ネットの情報は信用できないとみんなが思っているから、
逆に信用できるサイトには人が集まる(はず)。

そんな流れをうまく利用すると、
いままでにないデザインジャーナリズムの可能性が
生まれるかもしれない。。。そんなことを考えてます。

5月の対談、楽しみです!
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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