藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
ボイス夜話を終えて
今晩はタカヒラミクさんと、ヨーゼフ・ボイス夜話でした。そんでもって、家に帰ってきて、ひとりダメだし会です。語るべきことを言えなかったんで……。

ボイスを通じて、『アイオーン』(C.G.ユング)と『中世の秋』(ホイジンカ)がつながります。それが僕の卒論でした。心の底にあったのはP.K.ディックの『ヴァリス』のピンク色の光です。

1995年(僕は、日本ではこの年から他よりちょっと早く21世紀が始まったと思っています)、エヴァンゲリオンとオウム事件を経て、人類の覚醒と進化への夢は一時的に挫折します。

夢のような出来事が起きたのは、2001年の9.11です。その光景は映画の中でしかありえないものでした。

荒唐無稽の夢の終わりは、未来をつくる夢のはじまりです。いま僕の中では、ボイスは『非線形科学』(蔵本由紀)と『人間の条件』(ハンナ・アレント)につながっています。

ホイヘンスの振り子時計の同期と、ユングのシンクロニシティはどうつながるのか。ボイスがすべての人は芸術家であると言ったことと、パパネックが誰もがデザイナーであるということをどうつなげるか。創造性の中の秩序と揺らぎを考えると、ボイスとパパネックはつながります。うわ、忘れかけていたものがドッと吹き出してます。今夜は強い酒を飲んで寝ちゃうしかありません。

メトロノームのシンクロはここで見ることができます。ゆらぎがつくる創発。面白いです。ホタルのシンクロはこちら。いずれもYouTubeの動画です。生物も無生物も同期します。

ボイス自身の仕事は科学的思考によって人間の奥底に追いやられ眠らされてしまった創造性を蘇らせるものだったのですが、いまから見ると、現在の科学の最前線が追っている創発に近いものを求めていたようにも思えてきます。

ボイスのいう「社会彫刻」はひとりの天才の創造力だけはなしえないことです。人の社会の創発を誘うため、ボイス自身がゆらぎを引き起こす因子の役割を演じていたのではないかって思うんです。

人を導くカリスマが危険であることは、ナチス時代を経験したドイツ人だから重々承知していたはずです。ボイスはカリスマ的メンター(導師)ではありません。神のような存在でも、救世主でもありません。

ボイスはトリックスターです。神話などで物語を引っかき回すのがトリックスター。ただしボイスはとてもカリスマ的なトリックスターです。

ウィキペディアの説明だと、神から火を盗んだプロメテウスもコヨーテも、スサノオもねずみ男もトリックスターとなってますが、確かにボイスはこの系列です。神から火を盗むような英雄的行動力と山師的な胡散臭さを兼ね備えていますから。

ボイスを語れる幸せな時間をつくって下さったタカヒラミクさんに感謝です。タカヒラさんの個展「ボイスに教えてもらったこと」は明日というか今日(29日)までです。物語が物語を生んでいます。

【参考リンク】
*Wikipediaのヨーゼフ・ボイス。かなりしっかり書かれています。

*ボイスにはけっこう黒歴史があります。本人は黒歴史とは思っていなかったのでしょうけど。
たとえば日本のウイスキーのTVコマーシャルに出たこと。
それとこれ。Nenaみたいな曲を歌ってます。リードボーカルなのに後ろで歌ってます。恥ずかしかったんですかね。でも楽しそうです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-03-29 00:33 | Comments(0)
<< 空耳? 目黒のオンデュラトワール >>


S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

Twitterもやってます!

*当ブログの奥座敷
KoKo Annex

ライフログ
最新のコメント
以前の記事
カテゴリ
ブログジャンル
リンクについて
当サイトはリンクフリーです。
お気軽にリンクして下さい。

本ブログの記事と写真の
無断複写・転載を固く禁じます。




Copyright 2005-2016 Keiichiro Fujisaki All rights reserved
本ブログの記事と写真の無断複写・転載を固く禁じます。