藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
松永さんと柿木原さんとのトーク
6/19(金)松永真さんと柿木原政弘さんとのトークの司会進行役を務めました。東京ミッドタウンのデザインハブで開催中の「日本のグラフィックデザイン2009」の記念トークです。
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言うことは言うぞって姿勢の松永さんに、僕も柿木原さんもタジタジでした。危険球ギリギリの球を交え、のらりくらりと緩急つけながら、最後は145キロのストレートで心の真ん中を突く。

『デザインの現場』編集部に配属されて2年目、1987年に松永さんの8ページの記事を担当しました。24歳の僕はやはりタジタジでした。事務所に行くと掃除が行き届いており、ピカ、ツルっで、ピンと空気が張り詰めている。資料を入れてくれる事務所の袋は、真っ白で無地。うおー、これがトップデザイナーの事務所かとたじろぎました。おまけにキャプションを間違え、松永さんに怒られ、雑誌というのはどんなに頑張っても、一つの不注意の誤植で、一生自慢できるはずのものが、一生後悔するものになってしまう、ということを学びました。

松永さんは「こうあって欲しい」が強い人だと思います。しかもそれがいつも生活者目線。

松永さんの1987年の取材記事を読み返して、そう思いました。すっかり忘れていたのですが、掲載作品に対して数十字の自註(自身による解説)をつけてもらいました。一部引用します。

KIRIN LEMON 2101 「大人から買い与えるものではなく、うちの息子が自ら買い求めたくなるようなものを目指した」

NEWS(キリンシーグラムのウイスキー)「これまでのシズル感がどうとか、という既成概念を捨てながら、ある種の原形を持ち込みたかった」

最初のコメントには、うちの息子ならこれを買って欲しいって願いを感じます。次のコメントには、シズル感って広告をつくる人には大切なことだけど、生活者にとって決して無くてはならないものではないってことを考えさせてくれます。

松永さんは「半径3メートル以内のデザイン」ってことをよくおっしゃってました。スコッティのティッシュのパッケージなどまさに自分の傍に置いておきたいデザインって意味で不朽の名作です。

松永さんの「こうあって欲しい」の表現は僕が取材した20年前よりずっと進化しています。「こうあって欲しい」は「こうあって欲しくない」を暗示的に見せることでも表現できます。それがHIROSHIMA APPEALS 2007のポスターです。漆黒の太陽です。凸版印刷は松永さんの意図に表現するため、15度も重ね刷りしました。厚塗りの黒の表面が、原爆で焼きただれた皮膚のようになったものもあったそうです。
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松永さんは山城隆一氏の有名な言葉「デザインに悲しみは盛れないか」 を語りました。その問いへの松永さんの答えがこのポスターです。悲しみが盛れたのです。陰と陽が動的に交じり合う太極図のように、究極の黒は白き希望の種を宿します。最大の悲しみを暗示する図像を盛ることで希望を語ることもできる。

そこが今日の話のハイライトだったと思います。こうあって欲しいを感じつづけること──それはデザイナーの必須の心です。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-06-20 02:15 | Comments(0)
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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