藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
取り返しのつかないこと
昼飯時、ガス台の火の消し忘れ、31年間連れ添ってきたアルミ鍋の柄を焼いてしまいました。
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思えば広島市内の高校に入学したとき、この鍋といっしょに寮に入り、廊下にあった電熱器でインスタントラーメンをさんざんつくりました。

黄色い薄味スープが、ところどころ糊のようになって米粒の存在を消えているライスにかかっているカレーや、だし汁だけで卵を探さないといけない親子丼など、寮のメシが口に合わず、お腹が空くとラーメンを食べてました。

金ちゃんラーメンが一番安かったんでよく買ってましたが、今もインスタントラーメンの最高峰はサッポロ一番味噌ラーメンだと思ってます。どのタイミングでスープの素を入れるとウマイかなど研究を重ねました。そういえば金ちゃんラーメンは、高校卒業以来食べてませんね。激マズの思い出は、サッポロ一番塩ラーメンに、親が送ってきた梨を入れて、煮込んだ味。甘くてしょっぱく&すりごま付きのスープの味は、今も忘れることができません。

柄を替えれば、鍋は使えるでしょう。でも、この木製の柄には、僕の高校時代の手の感触が残っています。寮生活に馴染めず、最初みんなと同じ風呂に入るのがイヤで、1か月風呂に入らなかったこともありました。二人部屋で最初に同室になった子とすぐに険悪な関係になって、それから3年間ソイツとは会話もしませんでした。楽しい思い出もありますが、強烈に自意識過剰だったせいでツラいことのほうが多かったです。結局1年で寮を出て、賄い付きの下宿に。とても優しい家族で出会えて、やっと精神的なバランスを取り戻し、それからは最高に楽しい高校生活を送ることができました。

以前ある工学系研究者を取材したとき、道具は手のひらの裏側だって話をしてくれました。まさにこの柄は僕の手の裏側でありつづけてきました。高校時代バランスの悪かった自分の記憶に感触があるとしたら、この柄なんです。宝物です。ずっととっておきます。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-07-04 13:34
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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