藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2005年 05月 09日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
面白がる力
僕は長らく、雑誌編集者には3つの力が大切だと思っていた。
(1)発見する力。(2)仕切る力。(3)表現する力。
しかし、さらに大切な力がある。「面白がる力」だ。シリアスな雑誌なら「重要性を認識する力」と言い換えてもいい。他の3つは他人に任せられる。

(1)の「発見する力」は「リサーチ力」と言ってもいい。ネタ探しはライターや海外コーディネーターに頼むことができる。人脈を作って、各分野の特殊な情報を持っている人たちと仲良くなることも重要だ。専門情報を持つ人たちといろいろしゃべりながら、これぞ今重要というテーマを掘り起こす。時代の先を行く情報を持つ人たちが共通に話題にしているテーマは、美味しい果実に育つ可能性がある。
(2)は段取りを仕切ったり、スタッフを仕切る力。スケジュール管理、予算管理なども含まれる。取材の段取りを仕切ったり、台割りを書いたり、デザイナーとの打ち合わせをスムースに進めたりする力。
(3)の「伝える力」は「表現する力」と言い換えることができる。これもライター、カメラマン、デザイナー、部下やフリーの編集者に任せることができる。

「面白がる力」だけは、自分が今まで積み重ねてきたものにかかってくる。
「みんな知ってる?コレ面白いよ。エッ知らないの」「スゲーかっこいい! どう。どうなのよ」「かわいい〜。ねェ見て見て」「この問題は重要だ、絶対世間に伝えないと」「うん、この情報はカネになる」と確信し、周りをググッと引き込み、他人を巻き込んで関心事を共有してしまうパワー。それが編集者の基本的な資質だと思う。広い視野と知的な積み重ねがないと、世間より一歩先行くことを面白がることはできない。ま、あまり先を行き過ぎるとビジネスにならないのだが…。

世の中にこの「面白がる力」というものが存在するということは、僕はフリーになって、マガジンハウスの編集者たちと付き合って初めて知った。デザイン専門誌の編集をしていた頃は(1)(2)(3)があればいいと考えていた。編集長になってからは、これに加えて「リスクマネージメント」も肝に銘じていた。何かトラブルが起こったときにも、責任をきちんととって、解決できる力が大切だと。が、「面白がる力」というものが独立して存在するなどと考えもしなかった。だからマガジンハウスで仕事ができたことに対して感謝している。

最近、僕はライター仕事ばかりで編集者としての仕事をしていないけれども、「面白がる力」の重要性がしみじみ分かり、それで生きていきたいと思っているので、どうしても自分の肩書きから編集者(エディター)を削ってしまうわけにはいかない。

デザイナーにとっても「面白がる力」は大切だと思う。たとえば雑誌の仕事で言えば、デザイナーが編集者が面白がっていることを共有できないと、いいページはできないし、編集者以上にその素材を面白がれたら、編集者の期待以上のデザインができる。

問題を発見して解決する。それは最も大切なデザイナーの仕事だ。だが、発見した問題がどれほど重要か、どの問題を優先して解決すべきか、それを評価する能力こそ最も大切なデザイナーの資質ではないだろうか。評価能力に欠け、解決すべき問題の優先順位を間違えると、どんなに優れたセンスとテクニックを持っていても、解答(デザイン)は的はずれなものになってしまう。

ディレクターと言われる人たちも「面白がる力」が必須だ。ディレクターがいろんなことに面白がれば、自然にスタッフはディレクターが何を自分にしてもらいたいか理解できるようになる。面白がることは以心伝心の基礎、ディレクションの極意である。面白がる力とは道を示す力であり、他者と共有するコンセプトを作る力なのである。


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面白がる力はinterestを示す力ともいえる。interestとは「興味」でもあり「利害」でもある。つまり、興味があることと他者に示すことが、自己と他者の利害関係を一致させることになるわけだ。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-09 18:03 | Comments(0)


Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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