藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2005年 05月 16日 ( 2 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
グッドデザインのグッド
何故、グッドアート、グッドミュージック、グッドムービー、グッドポエム、グッドアーキテクチャー、グッドアニメといった言い方がないのに、“グッドデザイン”だけがありなのだろうか。

倫理を語るのに倫理的である必要はない。
道徳を論ずるのに道徳的である必要はない。

なぜなら、あまりで倫理的・道徳的でありすぎることは、ひとつの社会の規準でしか物が見えなくなることに他ならない。神に忠誠を誓う道徳な人間が平気で異教徒を殺す場面を歴史は何度繰り返してきたことか。

デザインの世界の精神基盤は、アートの世界よりも工学の世界に近い。“グッドデザイン”と“良い技術”は重なり合う。

工学者(エンジニア)は“良い技術”を生み出さなければならない。工学者は、人が良いか悪いかまだはっきり判断できない時代の最先端を行く技術を扱うのだから、一般の人よりも高い倫理観・道徳観を持っていなくてはならない。倫理観が欠如していると社会にとって害悪の技術を生み出してしまう可能がある。工学者は社会に役に立つ技術を生み出さなくてはならないのだ。人類の発展に寄与する技術を、国家のためになる技術を、企業にとってもお客様にとって良い技術を……。“技術”を“デザイン”に置き換えて考えれば、良い技術とグッドデザインの相似性が理解できるだろう。

デザイナーも工学者同様、倫理に対して敏感でなくてはならない。僕はユニバーサルデザインや環境に配慮したデザインを否定するわけではない。それは現代社会に必須のデザインの考え方だ。

しかし、「グッドであること」にこだわるだけでは、美術も文学も映画もあまりに表現が乏しくなることを忘れてはならない。建築をグッド/バッドで評価しないのは、建築は工学であるとともに芸術だと考えられているからだ。デザインもそうなのに……。建築には大文字のArchitectureというのはあるけど、デザインには大文字のDesignというのがない。

倫理をテーマにしながら「グッドデザインとか言ってもらいたくないぜ」とガツンと言い切れるラディカルなデザイナーの出現が待ち遠しい。

オリヴィエーロ・トスカーニのベネトンの広告キャンペーンのように。

[たとえばコレ]
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-16 21:44 | Comments(2)
 
覚醒は訪れない
友人のアーティストKさんがわが家に来た。
彼女のことば。

──もしも自分の作品が他人の作品に使われて、Kさんの名前がクレジットされてないとしたら?
「作者名のクレジットがないことでなく、その作品がどういう経緯で生まれたかを示してもらえないことが残念」

コピーライトは最終的には名前表記&お金の問題と思っていたので、この言い方には感服しました。


(イノセンスのDVDをいっしょに斜め観した後)
──エヴァンゲリオンは、2001年宇宙の旅やガンダムみたいな人類覚醒の物語だと思うけど?
「そうかもしれないけど、エヴァは覚醒自体の問題というより覚醒に至るまでの過程に共感を呼んだのよ。進化を前にして戸惑っていたりする……」

つまり、こうだ。エヴァとは人類補完計画の成就が問題でない。私たち1970年代前後に少年期を過ごした子どもたちはガンダムや2001年宇宙の旅やアキラなどで、人類が覚醒したり進化したりニュータイプになるという幻想を持たされてしまった。
が、来るべき覚醒がいっこうに訪れない。だから戸惑い焦り悩む。エヴァはその心理を巧妙に描き出して、大きな支持を集めたのだ。
映画版で示された人類補完計画はその内容などどうでもいい。エヴァは補完計画に至るまでの物語だったのだから。

自律型サバイバルと寄生型サバイバルを語った以前の投稿 「真ユニバーサルデザイン」を読んでもらうと、来るべき覚醒について何を話しているか深くわかってもらえると思います。

それにしても、彼女、ホント頭が切れます。尊敬します。「私はもう覚醒している」とも言ってましたし。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-16 02:58 | Comments(0)


Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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