藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2005年 05月 28日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
ああ、新宿駅サイン計画
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JR新宿駅のサイン表示がひどいことになっている。だいぶ前から気になっていたが、名作が台無しです。1988年GKグラフィックスがJR新宿駅のためにデザインしたサイン計画は素晴らしいものだった。(導入は89年だったと思う)。首都圏の駅のサイン計画は当時、黎デザインによる営団地下鉄[*注]が一歩先を行っていたのですが、GKのサイン計画はとにかく美しかった。

山手線の黄緑、中央線のオレンジ、総武線のイエロー、埼京線のグリーンなどJRの財産である「色」が、GKグラフィックスによる抑制されたデザインの中に生かされていた。「抑制された」と表現したのは、サインボードが環境に溶け込むように配慮されていたからだ。プラットホームやコンコースの線名表示(番線標)はダークグレイでの文字が白抜き、サインボードばかりがごちゃごちゃある感じを少しでも抑えようとしていた。

ホームの駅名表示サインボードは丸みを帯びていて圧迫感を抑え、下に少し傾き視認性を高めている。コンコース内の構内案内図も人の流れを妨げないように丸みを帯びていた。階段の登り口がゲートのようにデザインされた。「結界」を意味するものだった。目立てばいい、わかりやすければいい、ということだけでなく、人の無意識にも働きかけるデザインのインテリジェンスに溢れた斬新なサイン計画だった。LEDのオレンジとグレーンと赤の光を表示の主役として採り入れる試みとしても、それまでのサイン計画には無いものだった。

新宿駅のホームには、まだこれらの遺産が残っている。しかし、コンコースはひどい状態だ。蛍光灯がまばゆすぎ、光が過剰、プラスチックボードはこの上なく安っぽい。抑制は皆無。白抜き黒バッグで環境に溶け込むことを目指したデザインとは正反対だ。駅を降りる前から○○バシカメラの店の中ですか? 改装工事中といえ、もう少しやりようがあったのではなかろうか。

名作ロンドンの地下鉄を例に挙げるまでもなく、サイン計画は10年、50年いや100年の時間をかけてじっくり育てるもの。効率をばかり追っているとしっぺ返しが来ることがわかったのだから、JRさん、サインにもっと知恵とおカネをかけてください。
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今も残るかつての遺産。
カーブして下を向いた駅名表示板とダークグレイバックの路線名表示板
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ホームの路線名表示板を真下から見上げた図。
配色などは他の山手線の駅と一見同じだが、カーブしているのは、
初期に試行的に作られた新宿駅と秋葉原駅だけ
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表示板がゲートのようにデザインされている


[注]営団地下鉄(現・東京メトロ)のサイン計画は、村越愛策デザイン事務所、坪井恭平デザイン事務所、鎌田経世によって1973年に千代田線大手町駅のためにデザインされたものがベースとなっている。73年、村越愛策デザイン事務所のチーフデザイナーとして千代田線大手町駅サイン計画を担当した赤瀬達三が黎デザイン(現・黎デザイン総合計画研究所)を設立し、営団地下鉄サイン計画を引き継いだ。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-05-28 23:05 | Comments(3)


Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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