藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2006年 02月 18日 ( 2 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
電気用品安全法の施行に反対します。
デザインを愛する人間は、この法律の施行に断固反対すべきだと思います。電気用品安全法(PSE法)。
新しい基準を満たしていない家電、オーディオ機器、電子楽器、ゲーム機などのリサイクル販売が禁止されます。2006年4月1日から本施行されます。
リサイクル市場は、デザインを愛する心を育み、よいデザインとは何か考える機会を生む大切な場です。D&DEPARTMENTがそれを証明しています。ねえ、ナガオカさん。


【坂本龍一さんらによる電気用品安全法に対する署名のお願い】

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asahi.com 中古家電、もう売れない? 電気用品安全法が猶予切れ
ITmediaニュース「名機」が販売禁止に。4月に迫る「電気用品安全法」
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-02-18 18:56 | Comments(11)
 
輸入退治天狗
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渋〜い展覧会を見に行きました。渋谷のたばこと塩の博物館の「広告の親玉 赤天狗参上 明治のたばこ王 岩谷松平」展(3月12日まで)。親玉とか赤天狗参上って、なんのこっちゃ、です。いや、でも、この天狗にはいろいろ考えさせられました。

岩谷(いわや)松平は、たばこの製造販売で一代で財を成した実業家。薩摩から上京し、まだキセルで吸う刻みたばこが主流だった明治初中期、欧米の紙巻きたばこにいち早く目を付け、明治17年(1884年)ころに「天狗煙草」を発売。派手な宣伝で世に広めていきます。

天狗煙草にはさまざまな種類がありました。青天狗、赤天狗、金天狗、日の出天狗、国益天狗、愛国天狗、征清天狗、陸軍天狗、海軍天狗、日英同盟天狗、輸入退治天狗。そう、天狗さんはバリバリのナショナリストなのです。

ライバル、村井兄弟商会の主力は「ヒーロー」「サンライス」。アメリカン・タバコ社と資本提携して販路を拡大していきます。外国資本がバックについた企業に対抗するために、岩谷松平は「国益の親玉」と称し、純国産をアピールします。ポスターには「愛国心の有る人は天狗煙草を呑んでください。天狗煙草は輸入を防ぎ輸出をなし實に日本の名産なり」と書かれています。

このたばこを吸えば、お国のためになる、というのです。

プリウスに乗れば、環境のためになる、というのにそっくりです。

現代の日本では愛国心は道徳とは別物と考えられていますが、明治の日本では国を愛したり天皇を敬うことは、親を尊敬するのと同様の道徳の基本です。商品が倫理的・道徳的であることが、最終的に企業と消費者との信頼関係を築き上げる、という点は今も昔も変わりません。ま、100年前はいささか露骨すぎるのですが。

このパッケージはもはや完全に「メディア」です。たばこが美味そうだとか、くつろぐとか、スタイリッシュだと訴えるのでなく、天狗煙草を買えば“ワタシは愛国者”と自分自身にも他の人にも表明することができるのです。「Love Earth」とさりげなく書かれたオーガニックコットンのTシャツを着るのと“いいことをした感”の創出では本質的構造が同じです。ロハスと天狗煙草は、体にいい悪いは別にして、メディアとしての構造がいっしょなのです。

戦後、1951年に来日したレーモンド・ローウィは日本専売公社のために「Peace」のパッケージを手がけます。当時の総理大臣の月収の15倍のデザイン料150万円で。メディアとしての天狗煙草のパッケージを考えると、この逸話の隠されたメッセージが読み取れます。

消費文化を育てた高名なアメリカ人に「平和」という名のたばこのパッケージをデザインさせたことには大きなメッセージがあったのです。ローウィの著書『口紅から機関車まで』の翻訳者、藤山愛一郎は1957年岸内閣外相に就任し、日米安保改正に取り組んだ人物ですから。

メディアとしてデザインを読み取ると、グッドデザインのグッドの怖さが分かるはずです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-02-18 02:09 | Comments(4)


Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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