藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2006年 03月 26日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
サザエさんちの黒電話
久々にサザエさんを見ました。おそらく10年以上ぶりです。いつのまにか昭和回顧番組になってるんですね。

サザエさんちはダイヤル式黒電話です。イクラちゃんちがクリーム色のプッシュホンだった(4/30の放映ではピンクの布カバーをした黒電話に変わっていた。5/1追記)。タラちゃんの友だちの若いお母さんは割烹着を着てるし、カツオとワカメの部屋は畳の上に学習机。テレビは家具調。照明は格子柄の和風ペンダント。洗濯機は一漕式の全自動。番組中に流れた東芝の斜めドラム洗濯機のコマーシャルとえらくギャップがあります。

Wikipediaによると、携帯電話が登場しているみたいです。が、今日はイクラちゃんのおかあさんとサザエさんは固定電話で話してました。今どき主婦はケータイでしょと一瞬思いましたが、そう、もはやサザエさんの世界は「今」じゃない。少なくとも20年くらい時間が止まってる。きっと東芝の最新家電を一式揃えると、もはや「サザエさん的世界」が成立しなくなるのでしょう。

近所の人がガラガラと戸を開けて勝手に入ってきたり、縁側が友だちとの交流の場になってるのが「サザエさん的世界」で、玄関の鍵は指紋&虹彩認証で監視カメラも設置したセキュリティ万全の住宅では磯野家が家庭崩壊しそうです。ネット注文だと三河屋さんの立場も微妙になるでしょうし。そもそも考えてみれば、サザエさんほど大画面ハイビジョンで見る必要のない番組はありません。

かつて東芝にとってサザエさんは家電のある暮らしを描いて消費を促す番組だったはずです。明るい家庭に必要なのは蛍光灯。一家団欒の場には必ずテレビ──。しかし今は最新家電のある暮らしの夢をみんなで見る番組じゃなくなっています。

サザエさんは家電の家(か)の番組です。電(でん)を伝える役割は終わっています。東芝にとってみれば、家電こそ「家」の絆のシンボルだというメッセージさえしっかり伝わればいいのでしょう。つまり、サザエさんはモノを売る番組から、企業文化を伝える番組に進化している。私どもは電気製品を製造することで、家族の絆を育むお手伝いをしてきた企業です、と。

ですから、無理やりユビキタス・サザエさんとか作る必要はないのでしょう。ま、モダンリビングな磯野家だと、波平以外全員髪型も変えないといけないでしょうし。そうなるとみんなキャラまで変わりそうです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-03-26 21:03 | Comments(5)


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藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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