藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2006年 05月 30日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
メモしやすい話
d0039955_0334859.jpgAXISギャラリーで行われた佐藤可士和さんのトークを聴きに行きました。佐藤さんは一度も取材したことがありません。面識もありません。ここ数年間、広告やグラフィック関連の取材から離れていたせいもありますが、佐藤さんの活躍は雑誌やテレビを通して知るだけでした。

大学や専門学校でデザイン概論とかデザイン文化論という講義を受けもっているのですが、成績評価のためのレポートのテーマはこのところずっと「今あなたが最も注目するデザイナー・建築家」というものです。

これは僕にとってのマーケティング調査です。今学生に誰が一番人気があるのか? 注目のデザイナーは? そういったことを知るために利用させてもらっています。ファッションとか僕の弱いジャンルの知識を補うのにとても役に立っています。

最も学生(1年生)に人気のデザイナーは、深澤直人さん、佐藤可士和さんです。次に続くのが野田凪さん。建築家なら安藤忠雄さん。意外に海外のデザイナーが少なく、シャネルやコルビュジエなどの歴史的な巨匠は毎回多くもなく少なくもなくという感じ。昨年はCasaで丹下健三特集があったから丹下さんのレポートが増えたりと、展覧会や雑誌の特集などで順位は変動します。

概してメディアへの露出度に比例する結果になります。しかし、それにしても、深澤直人さんと佐藤可士和さんの人気度は目を見張るものがあります。

昨年は、深澤さんと佐藤可士和さんは取り上げる人が多すぎて読み飽きるから中途半端な気持ちなら書くなよ、学生に伝えたくらいです。でも、ここ数年で、唯一の100点レポートは、昨年(というか今年1月提出)の深澤さんとオリエンタルラジオの相似関係を取り上げたH大の学生のものでした。この二人に対しては学生の思いも篤いのです。

で、やっぱり、佐藤可士和さんについて、僕自身ちゃんと語れないといけないと思い、今回のトークに参加申し込みしたわけです。

17頁もメモしました。デザイナーが自分の仕事をスライドやPowerPointで語るのって、通常話があっちこっちに飛び、散漫で、僕は好きじゃないんです。メモをしていても面倒くさくなる。しかし佐藤可士和さんの話は最後までメモをとりました。
話は理路整然──。すべてのデザインに言葉で語れる理由があります。

佐藤さんはよく自分の仕事を医者にたとえると言っていましたが、クライアントの話をじっくり聞いて、問診して、病名を探り当て、解決すべき課題を設定するという制作姿勢を貫いているから、デザインの話がいつの間にかクライアントのユニークなキャラの話になっていき聴衆を惹きつけていきます。「作品」を語るというよりは「臨床例」を語るといった感じなのです。モノで語るのでなく人で語るってわけです。

どの臨床例の話も基本は、何が課題で、それに対してどういうコンセプトを立てて、どんなシンボルマークを作って、どう展開したか、といった内容です。マーケティング用語を多用して簡単な話を難しそうに語ることは決してありません。

ロゴの微妙なバランスが生むカッコよさとか、線や色でどうカワイらしさを演出したか、といった、最も言語化しにくい感性や情動の話もほとんどありません。この部分を語り出してしまうとディテールだけの退屈な話になってしまう。そこはビジュアルに語らせればいいわけです。

ということで、何が話のポイントかが明確だから、メモしやすい。余談や注釈の多い話では、こうはいきません。

プレゼンの時に、聞く相手がメモしやすい話をするって、きっともの凄く大切なことです。メモをとりながら、相手はウンウンと理解してくれるのですから。

伝わるのです。思いが受け手に──。

「僕はコミュニケーションをデザインしているんです」と語っていましたが、その言葉をちゃんとこのトークの場で証明しているのはさすがです。

今回のトークのテーマは「教育とアートディレクション」。明治学院大学のブランディングやふじようちえんの話などです。

「明学のシズルをつかむデザイン──シズルをつかむとは、明学らしさをつかむことですね」って語っていたのが印象的でした。シズル感って、もはや「らしさ」であり「本質」なんだと。

最後は「教育」から離れ、最近の仕事ということで、NYのソーホーに1000坪のショップをこの秋開店するユニクロの仕事の話になりました。グローバル展開するブランディングを手がけているそうです。Webデザインは中村勇吾さん。いろいろ凄そう。ユニクロ、変わりそうですね。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-05-30 00:35 | Comments(8)


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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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