藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2007年 10月 28日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
リッチズさんの演奏機械
東大・駒場博物館で開催されている「機械じかけの音楽── Musica ex Machina」展(12/2まで)へ、ドイツ在住イギリス人アーティスト、マーティン・リッチズさんの作品を見に行きました。
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行ったのは初日の19日。アップするのが遅くなりました。展覧会は音楽と機械の関係の歴史をテーマにしたものですが、メインの展示としてリッチズさんの作品が7点(だったかな)展示されています。

機械のオルタナティブとでもいいましょうか。リッチズさんの作品は機械をテーマにしたものですが、いま私たちの身の回りにある機械とは違った種類の機械です。現代の機械の祖型でありながら、主流からは外れた機械たち──演奏機械、振り子時計、機械式計算機、黎明期のコンピュータ。自動機械づくりは、魔術的な行為であり、神の御業を人が真似ることでもありました。機械は日用品でなく、ミクロコスモスだったのです。リッチズさんは、いにしえから続く「ミクロコスモスとしての機械」の系譜を現代に受け継ぐ作業を、黙々とベルリンのアトリエにこもりながら続けています。

もともと、リッチズさんの作品に魅せられた東大のヘルマン・ゴチェフスキ准教授が、リッチズさんを日本に招聘して個展を行いたかったけれども、東大の博物館では「個人の展覧会」を行うことができず、それならと、話をさらに膨らませて「音楽文化における機械の役割とその歴史」に関する展覧会にしたものです。リッチズさんの展示以外にも興味深い資料が並びます。

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リッチズさんと作曲家三輪真弘さんとのコラボレーション作品。今回の展覧会のために制作。ゲームセンターのピンボールみたいに偶然が作用する機械のように見えますが、偶然の要素はなく、すべて蛇居拳算(じゃいけんざん)というアルゴリズムにコントロールされた自動演奏機械。蛇居拳算は、日本人の高橋jaiさんの開発したもの。グーとチョキなら、チョキの勝ちというのがふつうのジャンケン。蛇居拳算は勝ち負けでなく、2人がグーとチョキを出したら「パー」が答え。チョキとパーなら「グー」。つまり2人が違うものを出したら、それ以外のものが演算の答えとなります。2人が同じものを出したら同じものが答え。つまりパーとパーなら「パー」となります。このアルゴリズムを自動演奏機械に応用。三輪さんは蛇居拳算のアルゴリズムを使って作曲を行っており、そのシステムをリッチズさんに伝えて、この作品を完成させたとのことです。

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18世紀のセリネットは、カナリヤといっしょに演奏した手回しオルガンの一種。それを現代に蘇らせたもの。

作家がいなくても自動演奏する作品もありますが、リッチズさん本人に動かしてもらわないと音が鳴らないものがあります。リッチズさんは会期中ずっと日本にいて、大学の用事などがない限り、なるべく会場にいると話していました。会場で見かけたら、ぜひ演奏をリクエストしましょう。ひじょうに寡黙な人物なので、自分からハーイ、演奏しましょうかって声をかけてくることはないでしょう。時代を超えた音の体験ができるはずです。

東京大学駒場博物館は火曜日休館なのでご注意を。京王井の頭線・駒場東大前下車。開館10時〜18時。入館無料。12月1日18時から、記念コンサートあり。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-10-28 11:48 | Comments(2)


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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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