藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2008年 03月 19日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
日本の軸線
お寺の写真です。何かおかしいと思いませんか?
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拡大してみます。
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そう、お寺なのに、しめ縄があるのです。福井県小浜にある若狭神宮寺。神仏習合のお寺です。予備知識なく行ったのですが、衝撃的な信仰の場でした。
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本堂の中は撮影できなかったのですが、薬師如来と、ワカサヒコとワカサヒメの神が並んで祀られています。明治の廃仏毀釈とその後の国家神道の形成によって、神仏習合の寺はほぼ姿を消しました。神社とお寺が隣り合っていて、神仏習合の名残を示すものは残っていますが、ここまではっきりかつての信仰形態が残っているのは、住職によると、日本全国でここだけだとか。戦前はここの縁起を語ると憲兵が飛んできて、戦争が長引いていれば、この寺の存在もどうなったか分からない状態だった、と。

奈良・東大寺で毎年3月に行われる「お水取り」で使う水は、このお寺の境内に湧く水が使われます。歩いて運ぶわけでもクルマで運ぶわけでもありません。遠敷川の約2キロ先上流にある「鵜の瀬」の水中洞窟と、東大寺 二月堂の井戸「若狭井」が地下でつながっているそうです。最初にこの地のカミが奈良に水を送るとき、東大寺の井戸から白い鵜と黒い鵜が飛び出したそうです。

ですから、若狭はお水送りで、東大寺はお水取りです。

小浜と熊野大社本宮は、南北一直線でつながっています。その軸線上に、京都も奈良もある。まさに日本のAXIS(軸線)です。昨年秋に熊野に行って、死者の国に充ちていた「死と再生」の力を肌で感じてきたばかりなので、偶然の神宮寺との出会いが心を強く揺さぶりました。

住職がお寺の歴史をお堂で説明してくれました。一神教こそ最高の宗教形態という固定観念から離れ、カミとホトケの2つの宗教を堂々と同時に祈る日本人の心性の可能性を考え直してみること勧めるその話は、カタチに宿る美しき矛盾に関心がある私にとっていろいろと考えさせられる話でした。
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「さきほどトカゲを撮っていた人がいるけれども、そのトカゲにも何か意味があるかもしれません」と住職。それ撮ってたのは私です。「しっぽ切れてましたか?」って住職が聞きました。

帰ってきて、よく考えてました。トカゲのシッポ、つまり再生です。熊野のカラスは、死者の国を導く使いです。つまり日本の軸線は死と再生とつながっている。そして再生の水を送るのは鵜……などなどと思いを巡らしました。

非合理を混沌のまま置くのではなく、真っ直ぐな軸線という合理のかたちの中に置くのが日本人の心性じゃないか。神宮寺の本堂のホトケとカミの配置は非対称、と住職は解説してくれました。シンメトリーというオーダー(秩序)を基本にしながら、異質のものを同時に受け入れるために、わざとずらす。合理のためのオーダーでなく、非合理を並び立てるためのオーダー。それが日本人が長く培ってきた心性かも。そんなこと、若狭から帰ってきて考えました。
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本堂の裏手にはカミの依り代のような大きな老木が数本。
手前には不動明王らしき石仏。

text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-03-19 23:16 | Comments(0)


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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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