藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2008年 07月 06日 ( 3 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
機能しないことが機能
2つ前の投稿の「ロバスト家電」のまーさんのコメントの返事を書いていたら、長文の面白い内容になったのでこちらに投稿します。

>まーさん

ちょっと前の「サルでもわかるデザイン」という表題の投稿に書いた「わかる子=よい子」「わからない子=悪い子」と同様の、「機能すること=よいこと」「機能しないこと=悪いこと」という教育的倫理観が、この世の中を強力に支配しているように、僕は考えています。

それが拡大解釈され「たくさん機能があること=便利でよいこと」という通念が生まれている。

「機能なんて幻想だ!」と誰かが叫んでも、もう通じないでしょう。「機能することはよいこと」という意識は社会に深く浸透しています。機能しない人はリストラされ、機能しない建物は処分され、機能しない植物は伐採されます。

機能しないと烙印を押されたあらゆるものが、誰かが機能を発見してくれるのを待っています。歴史的な遺産として集客効果がある、知る人ぞ知る建築家が手がけた作品だ、癒し効果がある、CO2を吸収する……、なんらかの機能が見出されれば、それらは生き残る。

誰も気にしなかった隠れた機能を探し出すことは、新たなビジネスチャンスにもなります。

そうした世の中ですから、「余計な機能はいらない」という主張にも機能主義的に説明しないといけない。「ロングライフがサスティナブル社会実現のための有効な機能のひとつだ」、「機能を絞り込んだほうが実は機能的だ」という認識が広がって、初めて新機能大歓迎主義から距離を置くことができるでしょう。

けれど、それは「反機能主義」ではない。盛り沢山の新機能は機能主義的ではないということですから。機能はいらないという機能主義は、デザインをしないことをデザインするというノーデザインの逆説と似たような論法です。

それを突き詰めると「機能しないことが機能だ」という主張も現れるでしょう。しかし、ここまで来るとけっこう気をつけないといけません。言うのは簡単ですから。

その主張が、詐欺師のものかユーザーのことを真摯に考えたデザイナーのものかを分かつ基準は、きっと、その主張が「機能って何?」「機能を有り難がる私たちの社会って一体何?」という問いへ導く力を持っているか、否かでしょう。使ってみると便利だけど、使わなくていいものを機能といえるのか。機能という言葉はそろそろきちんと再定義すべきだと思います。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-07-06 19:14
 
最近心がけていること。ビジョンとディテール
人より遠くを見ること。人より細かく見ること。ビジョンとディテール。何か新しいものを作ろうと思ったらこのことが必須だと思います。これがないと人はついてきてくれません。お金と権力があれば別でしょうけど、そうしたものとは無縁なもので。

遠くだけ見てディテールが見えてない人と仕事すると、スタッフは尻ぬぐいばかりになる。ディテールだけ見ててビジョンがない人と仕事をすると、何のため仕事をしているか分からなくなります。

だから無理をしてでも、遠くを見る、細部にこだわる。ビジョンとディテールの両立はリーダーの資質──僕の経験則です。

もうひとつの経験則として最近心がけていることは、人に居場所を作ってあげること。

人を見切ることを安易にやると、眠っている才能を見出せなくなります。居場所と責任が人を育てます。人は切るのは簡単、活かすのは至難。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-07-06 18:29 | お気に入りの過去記事
 
ロバスト家電
洞爺湖サミットのせいで、都心の繁華街や駅や新幹線に警官がいっぱい、メディアはエコエコ大合唱。

クリーンエネルギーの推進やサスティナブルな社会のあり方を考える良い機会になっていると思いますが、政府の号令ひとつで同じ歌を大合唱しだす日本社会の体質には、地球温暖化以上の危険を感じます。

とはいっても、僕も最近エコ関係の取材がけっこうやってます。編集者としては「時流に乗れるときには思いっきり乗ってしまえ」という魂がうずきます。ジャーナリストとしては大合唱に参加することへの危うさを感じます。ま、相剋とか葛藤というほど思い悩んでいるわけではないのですが。やっぱり僕の中では、編集者としての職業意識のほうが強いからかもしれません。

で、この際だから、日頃思っていたエコの話をひとつ書きます。

重電部門を持つ総合電器メーカーの洗濯機は壊れてはいけない。

原子力発電のタービンや制御システムを作っている会社が製造している家庭用洗濯機が、10年で壊れてしまうことはあってはならない。毎日洗濯している家庭でもモーターが回っているのは一日1時間くらい。特別過酷な環境下で24時間フル稼働しているわけじゃないのですから。

屋外で使用しているならいざ知らず、屋内の安定した環境で、週に7〜10時間稼働するモーター製品は、少なくとも50年はもつべきです。うちのはもうキャリア20年のベテランですが、外蓋のプラスチックが劣化してボロボロです。

20年使い込むと味が出てくるくらいの洗濯機はないものでしょうか。材料が劣化するとかヒンジが壊れるとか、スイッチやボタンといった物理的な故障の回避に細心の注意を払った設計をして、流行り廃りの激しい○○機能といった○○洗いといった特殊なプログラムを組み込まず、ロバスト性(頑強さ)を高める方向の製品づくりをすれば、ロングライフな洗濯機は可能なはずです。

原子力発電の開発で培った低コスト・高ロバストの技術を家電製品にも活かしてほしい。それこそエコロジーだし、サスティナブルデザインだし、地球温暖化防止対策だと思います。

日立や東芝や三菱電機といった重電部門を持つ総合電機メーカーは、松下やシャープとは違うビジネスモデルで、家電製品の開発にあたってほしい。日本のエネルギー産業を支えている会社だからこそ実現できるロングライフ家電があるはずです。頑強な家電ということで、ロバスト家電ってネーミングもいいかもしれません。

現在の家庭はモーターがいっぱいです。CDやDVDプレイヤーのディスクを動かすモーターにトレイを動かすモーター、ミキサーやフードプロセッサー、ドライヤーやヒゲ剃り、さらにはウォシュレットのノズルにもモーターが使われています。

なかでも洗濯機、冷蔵庫、掃除機、エアコンは家庭4大モーター製品といえるでしょう。24時間稼働の冷蔵庫や、夏はどうしても長時間稼働となるエアコンは、今後の技術開発でさらに消費電力を下げて、買い換えたほうが省エネにつながることはあるでしょう。しかし洗濯機や掃除機は使う時間が限られているので、長持ちすることがサスティナブルにつながる商品です。こうした製品は「ロバスト家電」として売り出してもらいたいです。「うちのモーターは100年壊れない」と言い切って──。

もちろんエアコンも冷蔵庫も、重電部門をもつメーカーならではのブランディング戦略の一環として、ロバスト家電化してほしい。高度な技術力でロングライフデザインを実現し、サスティナブルな社会に貢献する企業ということで、確実にブランドイメージは上がるはずです。

すべての家電をみんな10年くらいで買い換えさせるビジネスモデルはそろそろ終わりにしてもらいたいです。5年で買い換えさせる製品もあれば、50年買い換え製品もあるといった柔軟なラインナップを考えるべきだと思います。

「わが家の洗濯機5年で壊れたし、冷蔵庫は3年でいかれちゃったんだけど、あの原発のタービン作ってるメーカーの製品なんだよな」って会話がないように。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-07-06 11:23 | お気に入りの過去記事


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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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