藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
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text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
この顔はソニー
グッドデザイン賞ベスト15に選ばれたソニーのハイエンド録音機「リニアPCMレコーダーPCM-D1」。GDP2006の会場で見たときから「あっいいな、欲しい」と思っていたけど、まさか大賞候補になるとは思っていませんでした。特別な新しさを感じさせるデザインではないですから。
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操作系のデザインや、テクノロジーがギュッと密に詰まった高性能感が、実にソニーらしい。しかし、他にエントリーされたソニー製品を押しのけ、これが選ばれたことには、審査員からの最近のソニーデザインに対する公式の審査評とは別の、言外のメッセージを感じざるを得ません。「ソニーさん、いろいろ手広くやられてますが、やっぱり原点へ還ったようなデザインがいいですよ」って。

担当デザイナーにとってはうれしい受賞だと思いますが、ソニー全体にとってはちょっと複雑な受賞と言えるかも。僕は、単に形や色の言語を超え、操作感まで含めたソニーのデザイン言語のさらなる進化に期待しています。クリストファー・バングルとかジョナサン・アイブのような、デザイン言語を発展的再構築できる強力なデザイン・リーダーが必要な時かもしれません。20年くらい前に比べて会社が巨大化して、製品の種類とそのターゲットが広がりすぎているから、という言い訳をしていては、ソニーの顔がどんどん薄れてしまいます。
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by cabanon | 2006-10-12 18:15 | Comments(0)
 
有名建築家の作った縄文住宅
長野県茅野に行ってきました。尖石縄文考古館には、堀口捨己(1895〜1984)が、1949年に設計した縄文の復元住居があります。なんだか。伊勢神宮のようです。千木(ちぎ/屋根の両端に交叉する木)があり、切妻屋根があるように見えるからです。
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復元住宅というより、日本の神社建築の原型を表現した「堀口作品」です。切妻屋根を支える構造材を、交叉した部分で切らずに、天に突き出させたものが、「千木」になったことが分かります。でもその千木の原型があまりに堂々と天に突き出ている。日本のモダニズム建築の創成期をリードした大建築家の想像力が、科学的実証性をいささか飛び越えてしまっています。
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入り口の位置を中央からずらしたアンシンメトリカルなファサードに、堀口のモダニスト魂を感じます。
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さすがに鰹木(かつおぎ/屋根の上に水平に並べられた木)はありません。しかし、後代、鰹木が屋根にほぼ等間隔に置かれることを予感させる作りになっています。
現在の住居は設計をそのままに2000年に建て替えられたもの。縄文時代の資料より、日本モダニズム建築の資料としてのほうが価値が高いかもしれません
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by cabanon | 2006-10-10 15:01 | Comments(2)
 
PINK
PINKは赤と白の間の色です。

青と白の間は水色ですが、水色は「青い」と言ってしまえます。淡緑も萌葱も緑の属性の一部。薄紫は紫の一部です。

黄と白の間はクリーム、茶と白の間はベージュです。広く使われている人気ある色ですが、色としての個性は薄く、周囲との調和の媒介になる色として使われます。色としての象徴性はPINKに遠く及びません。

赤と白の間のPINKだけが、原色に匹敵する個性と象徴性を持っています。

黒と白の間のグレイは、PINK同様、黒からも白からも独立した個性を持っています。しかし、グレイを「色」と呼ぶか、「色彩の欠如」と考えるか、は意見が分かれるところです。

白は合理主義の色です。1920〜30年代のモダニズム建築の色です。脳みその色でもあります。
赤は血の色です。情熱や感情の色です。
その間に存在するPINKは、私たちの体の中の色です。理性も感情もPINKの中に包み込まれています。黒人も白人も黄色人種も、体を切り裂けばPINKです。桜、桃、薔薇、しあわせ、エロス、子供っぽさ、女性らしさといったさまざまなイメージを持ちながら、実は人間にとってこれほど普遍性を持った色はないのです。

岡崎京子の『pink』を久々に読み返しました。ありのままに、体の中の色のように生きてきて、いろんなヤな出来事の末、いつの間にか、性の記号としてのPINKと同化し、つまりOLしながら売春して家ではワニといっしょ暮らして、でも、それが妙に心地よく……という女性の話です。PINKが都市をふわりふわりと彷徨いつづけるのです。口紅の色もPINK、肉体の色もPINK。商品化された欲望も狂おしく体を駆り立てる欲望も、大人の分別も子どものイノセンスな心も、お金も愛も、すべてを平等に包み込んでくれる色──それがきっとPINKなんです。

* 僕のPINKの論考の大部分は、アーティストの笠原恵実子から教えてもらったことを、勝手に膨らませたものです。

**赤と白は弁証法で言うところの、どちらがテーゼでどちらがアンチテーゼというものではありません。だからPINKはジンテーゼではありません。その間にあるもの。赤と白を混ぜ合わせたら、そこにもうひとつの世界が開けていたのです。それが「三項目」です。否定の否定でなく、そこにすでにあるもの。ありうべきものとして存在する矛盾です。
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by cabanon | 2006-10-03 22:16 | 二項対立 | Comments(2)
 
お酒のパケ買い
d0039955_20432148.jpgかつてLPレコードをジャケ買いした感覚で、たまにお酒もパッケージ買いをしてしまいます。

近所の行きつけの酒屋で見つけた「水の王」。400mlの飲みきりサイズ。1050円で買いましたがネットで見るともうちょっと高いみたいです。盛岡の酒蔵「あさ開」の日本酒です。「大吟醸ライト」とパッケージに書かれている通り、サラリとした軽いお酒です。辛口のキレと米の香りを楽しむお酒。コクを求める方にオススメしません。食前酒にいいかもしれません。僕は、プチトマトともろきゅうで、あっと言う間に飲んじゃいました。生野菜系前菜が合うかもしれません。パケ買い成功です。

瓶の形から判断して、最初は「水の玉」という名前だと思ってました。だけど水の王。王をフランス語の水の「eau」にかけているようです。商品名とか書いたシールを簡単に剥がせるのがうれしいです。一輪挿しとかに使おうかな。
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by cabanon | 2006-10-02 20:43 | Comments(2)


Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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