藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
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text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
夢を見ないで夢を叶える
年の瀬といえば「芝浜」。リーマンショックや震災や原発事故の後、多くの日本人は芝浜の浜辺で大金の入った財布を拾う夢を見てるように思える。アベノミクス、STAP細胞、東京五輪……夢を追い続けたり夢で終わったり。

でもこの国に本当に必要なのは、拾った財布に入った大金より、拾った財布を隠してくれる女房かもしれない。

マスメディアは財布探しを煽りつづけ、もし拾ってきた財布に空だったら「期待した人への裏切り」だと拾ってきた人を徹底的に叩く。その繰り返し。人びとが夢見がちになればなるほど、権力者による誘導はたやすい。

芝浜の最後のセリフ「また夢になっちゃいけねえ」って言えるのは、自分なりに真摯に現実と向き合う力を身につけたことで、かつての自分が気づかなかった夢を今の自分がもう叶えているとの自覚があるからで、ここには「夢を見ないで夢を叶える」という奥義がある。

誰かが見せてくれる夢はあなたの夢じゃない。あなたが見たと思った夢はあなたの夢のほんの一部でしかない。夢から目覚めないと夢は実現できない。夢を夢にしないために目を覚まそうよ。目を覚ましてまだ気づいていない自分の夢を探そうよ。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2014-12-29 10:21
 
デザインとアートの方法論について
デザイン思考やスペキュラティブデザインといった方法論がいかに現代アートの方法論と重なり合うか──。以下の重なり合う方法論を見ていただきたい。依頼主がいるからデザインだとか、自由な自己表現がアートだとか、単純に切り分けられる時代ではなくなっています。

1)リサーチや観察を重ねて、見えない文脈を読みとり、やるべき課題を選択する。

2)関わることで問題を引き出す→たとえば、地域社会を巻き込むプロジェクト型。エスノグラフィの方法論の導入。

3)「作り手と受け手」「作品と人」「道具・空間・環境・人」の関係性(インタクラション)を問い直す。

4)従来の受け手だった人を作品制作プロセスに積極的に巻き込む。

5)スピーディーなプロトタイピングで、多くの人とつくるプロセスを共有し検証を繰り返す。
→ちなみに、つくるプロセスの可視化や共有化は、逆に「その人」しか出来ない、交換不能の領域を浮き立たせる。結果的に創造性の秘術化とブラックボックス化を促進させ、カリスマアートディレクターやアーティストの立場は強化される。

6)既成の領域を飛び越え、コラボレーションを企てる。

7)物語を構築し、世界観を共有する仕組みづくりを行う。たとえばブランディング。

8)精密なコンセプト策定の必要性。

9)プレゼンテーション能力を磨く。→説得しないと物事は実現しない。

10)評価される場(マーケット、批評空間など)を意識した戦略づくり。

11)量産技術と量産技術の美学を使いこなす。

12)不可視なものを可視化する。

13)両立不可能のものを共存させる。

14)多様なメディアへの展開力。

15)問題解決のための手法を問題提起や批評に使う。
→叫びや怒りによって問題提起を行うのでなく、問題解決というデザイナーが得意とする手法によって問題提起をする。
→風で転がる地雷撤去ボールで世界のすべての地雷は撤去できないが、その美しい問題解決策には強烈な問題提起力がある。

では、デザインとアートとどこが違う?と問われたら、こう答えます。未来重視・未来依存。わたしたちには未来が存在する、未来は何かが変わり、きっと未来は今より良くなる、厳しい未来が来たとしても私たちは立ち向かうことが出来る、という考え方に依存しているのがデザインだ、と。

デザインの歴史は産業革命以降に始まり、未来をずっと夢見てきました。きっとビジネスは成功する、社会環境が良くなる、多くの人の生活が快適になる、と。

しかし人間の表現分野はもっと遠い過去に根ざしたものがあります。先達たちの仕事を継承することに重きを置く芸術はたくさんあります。アートは未来を考えないなんてバカなことを言おうとしているのではありません。過去の歴史に根ざして未来を考える姿勢で作品を世に問いかけるアーティストはたくさんいます。

過去に重心を置くか。未来に重心に置くか。デザインは自らの歴史が短いために、生まれてからこの方未来のほうへ重心をかけてその存在意義を主張しつづけてきました[註]。しかし、未来なんて「存在しない」ものですから、胡散臭いものにならざるを得ません。その胡散臭さを背負うのがデザインなのです。

[註]タイポグラフィやカリグラフィは産業革命以前の歴史をもち、常に歴史を参照しながら発達してきたもののため、デザイン領域の中で特殊な位置を占める。建築が他のデザイン領域と切り離されたものになっているのも、建築が人類の文明誕生以来の輝かしい歴史をもつ領域だからである。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2014-12-06 16:59
 
モダニズムについて
モダニズムはいまだに世界を覆いつづけている。モダニズムといえば、芸術史や建築史においては、主に19世紀後半から20世紀中盤にかけて、進歩史観や合理主義や科学技術の進展を背景に、芸術家や建築家やデザイナーを、伝統的な方法論にとらわれない新しい造形・建築・社会の構築へと突き動かした運動だが、モダニズムは単なる文化エリートたちの運動ではなかった。20世紀中盤までのモダニズムは初期モダニズムと呼んだほうがいいだろう。

1970年代〜1990年代初頭に世界を覆った建築デザイン界のポストモダンは、確かに初期モダニズムの次をめざしたが、それらは簡単にモダニズムのつくりあげた世界に消費され飽きられて、ポストモダンという名のデザインブームに終わってしまった。しかし、このポストモダンデザインの登場と衰退は、モダニズムの本質を示唆すること結果になった。モダニズムは乗り越えられるものではなく、本質的に次から次へと「次=ポスト」を生み、乗り越えようとするものを呑み込み続ける巨大な運動体である。

さて、そうした視点に立ってモダニズムの特徴を列記してみる。

◉合理的であること
1)目的があること
2)秩序があること
3)論理的な根拠をもつこと
4)客観性があること
5)機能性の重視
6)科学的であること
7)法則に基づくこと
8)再現可能であること
9)検証可能であること
10)簡潔を美とする
  →数学者や物理者にとってのエレガンスという美学

◉経済的であること
1)最小限で最大の価値(効果)を生むこと
  →Less is More
2)効率的であること
  →再構築・リストラ・合理化の際限なき繰り返し
  →新機能の探究

3)交換可能であること
4)規格化されていること
5)価格づけされること
6)移動可能であること
7)最適化されていること
8)無駄を排除すること
9)倹約を善とすること
10)簡潔であること
11)人間を生産機械の部品のように扱うこと(人間疎外)
  →初期モダニズムに顕著。いまだ貧困層を多く抱える国の生産現場では止まる気配がない
  →戦争もまた人間を戦争機械の交換可能の部品のように扱う

12)人間を中心に設計すること(人間中心主義)
  →ある程度社会が豊かになると、人間を疎外する生産環境は長期的視野に立つと効率的とは限らない
  →エルゴノミクス(人間工学)は戦闘機の操縦士の誤動作を是正する研究を契機に発達した
  →個性の表出を消費に求める高度消費社会が形成されると、生活者の視点からのものづくりが大切になる
  →ヒューマニズムの市場化が、エルゴノミクスや人間中心設計(ヒューマンセンタードデザイン)やユニバーサルデザインを広げているという考え方


◉システムとして機能すること
1)構造化されていること
2)組織化されていること
3)分解できること
4)用途に合わせシステムを変え、個々の要素の機能や配置や形態を入れ替えられること
  →ユニバーサルスペース
  →可動性、可塑性、可搬性

3)記号体系化されていること
4)造形を言語としてとらえること
  →視覚言語、デザイン言語、建築言語、造形言語。
5)物語化されていること
6)役割が分担されていること
  →ちなみに、デザイナーという職種は産業革命で生じた創造過程の分離つまりデザインする人と生産する人の分離から生まれた。
7)個々の構成要素に機能・役割があること
8)役割をもつものに責任が発生すること
9)規則が支配していること
10)緊張感に美を見出すこと
  →例えば、重力に抗う建築構造

◉更新しつづけること (Up-to-date)
1)未来を描くこと
2)因襲から解放されること
3)変化を受け入れること
4)進歩をめざすこと
  →開発、再開発、成長、右肩上がり、改革、イノベーション…
5)変化がもたらす負の側面を進歩という名の下に強要すること
6)進歩の負の側面を進歩によって克服できると考えること
7)進歩の物語をつくることで、更新を進歩にみせかけること
  →スタイリング、計画的陳腐化
8)更新を強要すること
9)進化すること
  →進歩とは違う
  →世界の多様性に適応すること
  →適者生存

10)成長への強迫観念
11)停滞や後進や衰退を悪とすること
12)衰退の局面においても、衰退に対応するための進化や更新を行うこと
12)持続可能な成長を求めること
13)速度の美を愛でること
  →いまだ止まらない世界最高速の競争
  →速度信奉の裏返しとしてのスローさの信奉

14)記録を破ること
  →最小、最大、最長、最速

◉健全であること
1)健康であること
  →スポーツの発展
  →自己管理・自己抑制のできる人間になること

2)衛生的であること
3)清潔さであること
4)正直あること
  →デザイン上の正直さ(構造・素材・労働の正直な表出)
  →ビジネス上の正直さ(勤勉・倹約・信用第一・顧客本位)
  →誠実、実直、真面目、正しさ

5)倫理的に善であること
  →正義の追求
  →コンプライアンス(法令遵守)の徹底
  →現世で勤勉に働き事業を拡大することを善とするプロテスタントの倫理観が資本主義を生み出した──マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

6)死を隠蔽すること
7)逸脱を治癒の対象とすること
  →非行性の形成
  →疾患名の増加

8)健康美を追求すること
9)清潔さに美を見出すこと
10)純粋さを好むこと

◉アイデンティティをもとめること
1)個性を持つこと
2)名前を持つこと
3)自己表現すること
4)他者のアイデンティティを認めること
  →多様性
5)ブランディングすること
  →コーポレートアイデンティティ、国家、地域、商品、あらゆる領域でブランディング
6)同一性というフィクションにリアリティを持たせること
7)国民国家、民族主義の台頭

◉人間中心であること
1)ヒューマニズムを掲げること
  →一方で、モダニズムは貪欲や不寛容や無関心に結びつきやすく、経済性優先や合理主義が行き過ぎた結果、人間性不在のシステムを生みだし、世界各地で途轍もなく悲惨な人間疎外や人間性の蹂躙、虐殺を引き起こしつづけていることを忘れてはならない
2)多様な使い方に対応した「均質化した」都市や空間や道具やシステムを作り出すこと
  →ユニバーサルデザイン、エルゴノミクス、iPhone
3)人の違いに合わせてパーソナライズされた道具や空間を作り出す「システム」を創出すること
  →カスタマイズ、3Dプリンタ、SNS、UX、インタラクションデザイン
2)排除しないこと
  →共創、インクルーシブデザイン
3)豊かな社会をめざすこと
  →豊かさとは何かの答えは変わりつづける
4)幸福をもとめること 
  →幸せとは何か
5)身体性を重視すること

◉客体化すること
1)記述すること
2)言説化すること
3)名前をつけること
  →主体的なニュアンスである「名前を持つこと」と違う
4)あらゆるものを記録すること
  →リスト化。戸籍を持つこと
  →ログ化、ライフログ、ビッグデータ

5)定量化すること
  →データ化
6)可視化すること
  →見える化、ビジュアライゼーション
7)公開すること
  →パブリックドメイン、シェア、共創へ
8)分類すること
  →グループ分け、タグ付け
9)整理すること
  →分類したものを構造化する
  →図表化する。ダイヤグラム
  →整理術、収納術
  →Organizeすることに美を見出す
 
10)収集すること
  →コレクション、コレクター
11)アーカイブ化すること
  →記録を分類整理して保存する
  →収集したものを展示する。
  →図書館、博物館、美術館、動物園、植物園、水族館
 
12)比較すること
13)分析すること
14)評価すること
15)公正に評価する仕組みが組織されていること
  →学会、コンクール、コンペ、スポーツの審判団、選挙管理委員会、裁判所、ジャーナリズム(本来の機能として)
16)ランク付けすること
17)フィードバック機構があること
  →成果を相対的に評価して改善を重ねられる機構を持つこと
18)監視すること
19)管理すること
20)管理されること
21)型にはめること
22)規準を定めること
23)体系化すること
24)統合すること
25)問題を探すこと
26)解決すること
27)コンセプトを求めること
28)対話を重視すること
  →インタラクション
29)批評すること
30)メディア化すること
  →大衆の登場、マスメディアの発展、ネットの急進展
  →スター生産システムの進展
  →メディア戦略、メディア対応
  →メディアを利用したオーディエンスの操作


◉呑み込みつづけること
1)あらゆるものを利用可能・交換可能にすること
2)分類によって多様化を生むこと
3)規準によって差異を生むこと
4)標準化と多様性を両立すること
5)均質化と個性化を同時に生むこと
  →初期モダニズムでは進歩の最前線(前衛)が突出し、それ以外が受容者として均質化される傾向にあった
  →個人の意見をもつ自我の確立と、意見を操作される大衆の誕生はほぼ同時進行

6)伝統を組織化すること
  →近代以前の文化を言説化・可視化・組織化し、「伝統」という名の下に「現代」と対置するものとして再編する
7)暗黙知を言説化・可視化すること
8)辺境・周縁をとりこむこと
9)境界を越えること
10)排除しないこと
11)専門領域の分化と、領域横断による知の形成を両立させること
  →異種格闘、学際、interdisciplinary, crossdisciplinary,transdisciplinary
  →専門的な知を深化させる組織化された領域の存在は、学際的なアプローチの大前提である。

12)分析と統合を行き来すること
  →すべての造形活動を建築に統合することを標榜したバウハウス宣言に始まり、バウハウスは、親方(マイスター)と徒弟のいる各種専門工房をもちながら、領域を超えた生活の芸術化、芸術と産業、芸術とテクノロジーの融合を試みる教育システムの成果は、デザインは「統合の力」であることを世に示す結果となり、だからこそバウハウスは近代デザインの基礎を気づいた造形学校と言うことができるのである
13)グローバル化すること
  →急速な経済のグローバリズムに対抗するには地域経済の立て直しや伝統文化の組織化などモダニズムの方法で対抗するしかない
  →グローバリゼーション以前に、ナショナリズムがすでに世界を呑み込んでいる

14)環境という視点を導入すること
  →環境という言葉を使うことで世界が個から切り離され言説化される
  →環境という言葉は世界のあらゆる事象を呑み込む
  →環境が個性を生むという考え方
  →環境側に情報がある。アフォーダンス
  →生態系、生活環境、無意識が多様な個性を育む

15)変化の最前線が移動しつづけること
  →変化の中心は周縁にある
  →融合領域や境界や辺境に変化の兆しやイノベーションの種をもとめること
  →アヴァンギャルドの発生と消滅
  →イノベーションをめぐる企業や国家の競争

16)イノベーションの遍在をめざすこと
  →変化の最前線の位置は常に変化しつづける。変革の場所の移動が、専門家たちの前衛芸術家の限られた空間を超えて、高速に大規模に行われるようになった。それを可能にしているのが、パーソナルコンピュータ、SNS、パーソナルファブリケーション
17)対抗するのもの・異質なものを組織化して、それを呑み込むこと
  →建築の“ヴァナキュラー”も、デザインの“アノニマス”も、アートの“アールブリュット”も、そう名づけられた瞬間に、モダニズムの文脈のなかに吸収される
  →伝統を組織化して呑み込む
  →インターナショナルスタイルと真逆に建築言語で、地霊、土着性、宗教、信仰など、当時のモダニズムにとって異質なものを「呑み込んだ」ル・コルビュジエのロンシャン礼拝堂の造形は、モダニズムの例外的な作品でなく、まさにモダニズムの最先端の作品だったといえる

18)乗り越えようとするものを呑み込むこと
  →モダニズムは必然的に様々な現れ方のポストモダニズムを生み、それを呑み込みつづける。ポストモダンが生まれて、真のモダニズムが発動したと言える
  →モダンと近代が、いつからコンテンポラリーや現代になるか。いつの時点で変わろうがモダニズムの本質が変わっているわけではない。そうした言い換えを可能にするのがモダニズムの本性なのだからだ
  →ちなみに建築デザイン界のポストモダニズムが黒歴史化したのはオーケストラの指揮者の教育を受けた秀才建築家が、いきなりDJを始めて、大金かけてカッコ悪いもの作ってしまったせいである


◉結論
モダニズムは再構築をくりかえし、その現れ方を漸次変化させながら、外部にあったものも見えなかったものも、モダニズムに抗うものをも、あらゆるものを覆い尽くす、世界の遍在をめざす終わりなき運動。

以上のメモは、僕が書くのでかなりデザインやアート寄りの話になっています。同じく終わりなきものである資本主義と関連する考察などがもっと必要でしょうが、とにかく思いついたままを挙げたものとご理解ください。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2014-12-06 16:02


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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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