藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
岩崎秀雄さんとのトークのお知らせ
8/29(土)13時30分から、青山ブックセンター本店で、生物学者にしてアーティストの岩崎秀雄さんとトークをします。かなり面白い話が聞けるんじゃないかと思ってワクワクしています。
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これが岩崎さんの作品です。まずは部分を。
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全体です。
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切り絵です。まさに超絶技巧。模造紙をデザインナイフで切ってつくったものです。

岩崎さんは早稲田大学でシアノバクテリアを使って、生命のリズムとカタチの発生の原理を探る研究をしています。

シアノバクテリアは光合成を行うバクテリアで、先カンプリア時代に大量に発生し、地球の大気の酸素濃度を一気に上昇させる役割を果たしました。シアノバクテリアは一日周期で変動する生理現象を示す最もシンプル生物で、生命のリズムが生まれるメカニズムを解き明かすには非常にふさわしい研究対象とされています。

24時間振動する酸素反応系を試験管の中でつくることに成功するなど、岩崎さんの研究は人間の手で思い通りの生命の機能やシステムを創出したり操作する構成的生物学(シンセティック・バイオロジー)の最前線に位置するものです。
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培養中のシアノバクテリア各種。

切り絵は7歳から始めたそうです。特に生物学とは関係なく、学業や研究と並行して、独学でコツコツ制作を続けて、独自の世界を切り拓きました。

切り絵というと、風景だったり歴史物ものだったり具象的なものが多いですが、岩崎さんの作品は抽象です。始めた頃は動物などをモチーフにしたそうですが、切り絵しかできない表現を考えて、抽象にたどり着いたそうです。

切り絵は平面的に見せると、特に印刷などをされると、木版画と同じように見えてしまいます。そこで手触りを大事にしたいとか、裏返して見られるものをつくりたいとか、いろんなパターンが引きひしめき合っているものをつくりたいと考えるうちに、自然に抽象表現になっていたそうです。
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顕微鏡で見たシアノバクテリア。

別々の活動だった生物学と切り絵が次第に接近していきます。現在の岩崎さんの作品は、シアノバクテリアのカタチや動きを連想させます。シアノバクテリアの世界を写し取っているわけではありません。切り絵のイメージは、即興的に生まれていくそうです。手触りが大事で、指がどんなものが触りたいかということを大事にすると勝手に手が動いていくそうです。

でも、なんとなく似てます。

生命がカタチや動きを発生させるのと切り絵とでは、形づくりのシステムは大きく異なります。しかし違うけど、関係性がある。相補的な関係になっているのかもしれません。そこが面白い。そこを岩崎さんに聞いてみたいと思っています。
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研究室の壁に映し出されたシアノバクテリアと、
天井に吊られた切り絵(右上)とその影。

人がつくりしものと、生命が非線形的な時間発展の中でつくりだすもののは、どう違いどう似通っているのか。それは山中さんの骨展のテーマにも通じるもののように思います。

人がつくりしものといっても、一括りにできるものではなくなっています。即興性重視か生産計画重視か、はたまた全部人工物か生体を使ったものかでかなり違ってくる。岩崎さんは生物学の知見を活かした現代アート事情も詳しいです。「生命科学から見たアート」「アートから見た生命科学」の両方の視点に立って話せる岩崎さんは世界に類のない立ち位置にいる人物です。生命の創造と芸術の創造の「鏡」の如き関係はいかなるものか。そのあたりを突っ込んでお聞きしたいと考えています。
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研究室にはこんな作品も。

text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-08-05 16:29
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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