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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
心を癒すコートとは?
心を癒すコートとは?_d0039955_12565846.jpg昨日は打ち合わせの後、展覧会巡り。
アクシスギャラリーで(11月26日)まで開催されているプレファブコート展「眞田岳彦/人を包むデザイン」が面白かったです。プレファブコートとは「震災など自然災害後に起こる“心の痛みや傷つき”(PTSD) の緩和を目的とした組み立て式コート」のことだそうです。最初は理解できませんでした。事前にハガキの告知を見たときはピクトグラムの展覧会かと思ったくらいで、会場に入っても最初はポカーンとインスタレーションを眺めてました。
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コートですが、広げると長方形のシートになります。四隅にファスナーが付いていてつなぎ合わせることができる。テントにしたり、囲いにしたり、座るためのシートにしたり、状況によってさまざまな使い方が可能です。会場ではコートがつなぎ合わされ、パーティションになったり、囲いになったり、天井から吊されていたりで、空間全体がテキスタイルによるインスタレーションになっていました。きっと災害時の避難所でテントなどに使えるだろう……そこまでは会場を歩き回っているうちに理解できました。
心を癒すコートとは?_d0039955_12155271.jpg
しかし「心の痛みや傷つきの緩和」という点に関しては、いまひとつ理解できない。眞田さんは哲学者や精神医学者との対話や交換書簡、勉強会を通して、デザインによってPSTDの緩和をどのように図るかを考えていったそうですが、どうも机上の空論のような気がして。実際現場でどうなのか? と、つい意地悪く思ってしまうのです。

心を癒すコートとは?_d0039955_12174984.jpg会場内のパネルを読み込み、よ〜く考えるといろいろ推察できます。他人とコートとつなぎ合わせて被災者同士の連帯感を演出できる。子どもたちの心のケアのためポケットの部分にアザラシの絵をそっと忍ばせる配慮もあります。薄くて強度が高い生地は、東レがこのコートのために製作したナイロンリップストップ生地で、他に蓄光繊維や消臭繊維も使われています。光を放つ蓄光繊維はきっと心の灯火となるでしょう。消臭効果は心の落ち着きに作用するでしょう……。

でも実証がないから説得力に欠けてしまう。お披露目の次はぜひ現場へ。実証報告をしてもらいたい。

坂茂さんの紙の建築が素晴らしいのは、最初紙管を展覧会のインスタレーションに使った後、さらになる研究を重ね、アフリカの難民のためのシェルターとして国連難民高等弁務官事務所とともに開発を進め、戸数はわずかだったけれども神戸にもトルコにも実際に紙の仮設住宅をつくった点にあるわけです。プレファブコートもそこまで行って、いいのか悪いのか評価できるわけで、今回の展覧会は、評価不能、でも試みとしては面白い。この先の展開を見てみたい、そう思ったわけです。

インスタレーションの次は、ヨーゼフ・ボイス風に言えば、アクション!
次のアクションがプレファブコートの価値を決めます。


*******
アクシスギャラリーの後は、森美術館へ。杉本博司展、よかったです。作品もいいけど展示もよかった。とくに入口。無の世界から立ち上がる力強いイメージの世界(ネタバレになるので説明しません)で、つかみはOK。池田亮司のサウンドインスタレーションもいい。空間系のデザイナーの方も必見だと思います。

ダヴィンチ展を見て中目黒のフィンランドカフェへ。マリメッコのテキスタイルデザイナー、マイヤ・イソラの娘、クリスティーナ・イソラさんの講演会を聞く。マイヤの生涯が見渡せて勉強になりました。100人弱くらいの聴衆のなか男性は5人くらい。男一人で来ているのはおそらく僕くらいだったと思う。あとはカップル。clamp展以来の“オジサンここにいてもいいのかな感”でした。

【関連リンク】
眞田岳彦氏のHP
・プレファブコート展についてはアクシスギャラリー
フィンランドカフェ
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-10-28 12:27
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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