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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
イームズ展/勝手にベスト5
遅ればせながら目黒区美術館に「チャールズ&レイ・イームズ〜創造の遺産〜」展(11日まで)を見に行きました。1997年から始まった世界巡回展。ようやく8年目にしての邂逅です。

98年のロンドンのデザインミュージアムで開かれた巡回展は、当時グッチのデザイナー、トム・フォードがサポートしたことで知られ、モード界でも話題になった展覧会です。CasaBRUTUSなどでイームズのことを書き倒してきた僕にとっても特別の思い入れがあります。99年だったか来日したトム・フォードに、ファッションのことは一切聞かず、この展覧会に絡めて彼の関心のある建築や家具デザインに関することだけインタビューしたことがあるし、2001年には「いったい日本にはいつ来るんだ」とイームズの孫デミトリオスに問いただしたりしてましたから。

日本展は昨年11月和歌山県立近代美術館で始まりました。人より先に、その時行こうと思っていたのですが、忙しくて時間がとれず断念(和歌山県はまだ一度も足を踏み入れたことない県のひとつ、全県制覇まであと9県、、、なことはどうでもいい)。この展覧会は春に一回東京駅の大丸デパートで開催されました。僕は秋に目黒でやるということを知っていたので、大丸には行かず、やっと本日、思いを果たしてきたわけです。

平日の午後ということもあって、すいていて、ゆっくり鑑賞ができました。イームズ入門者も楽しめますが、かなりマニアックな展示もあります。けっこうイームズを知っている人向けに、“勝手にベスト5”を作ってみました。

【第5位】 短編映画「Powers of Ten」の撮影に使われた大きく引き延ばしたプリント。あっこのへんは写真じゃなくてイラストなんだ、とかわかります。実際の撮影にはこのプリントだけでなく、等身大くらいの地球儀なども使っていたはずです(スタッフのパーク・ミークがその地球儀をコマ撮りしている写真を見たことがある)。

【第4位】イームズチェアの実験的試作品。3本脚のDCWの原形や、背座一体に試みた成型合板のシェル(結局背と座を分割したLCWのような形で製品化せざるを得なかった。3本脚といい背座一体の成型合板製シェルといい、その後デンマークのヤコブセンがアントチェアでイームズにインスパイアされてイームズのやらなかったことをやってしまう。如才ないというか)、ワイヤーメッシュチェアの試作シェル(おそらくダイヤモンドチェアのハリー・ベルトイアがスタッフとして関わっていて、イームズとベルトイアのケンカ別れの原因のひとつにもなっている)など、貴重なプロトタイプが見られます。かなり初期の成型合板の実験的作品にもすでにショックマウント(背座と脚の間に入れるゴム製の衝撃吸収用パーツ)がついているのに驚きました。

【第3位】イームズ夫妻の撮った写真。デュープですが、35ミリスライドがライトテーブルに100枚以上(きっと)を置かれ、ルーペを覗きながら鑑賞できます。チャールズと同じ思いでポジ選びができる。特に被写体をグラフィカルに捉えた写真がいいです。剣持勇も同じように写真を撮っていますが、いかにイームズの写真に影響を受けたかが分かります。それと、写真としては大してことないけど、イームズが熱心に撮っていたというサーカスの写真の一部が見られたのがうれしかった。サーカスとは「遊び」のエッセンスが凝縮された場です。この「遊び」への関心が、イームズ夫妻のさまざまな仕事へ展開されています。

【第2位】イームズ夫妻のコレクション。ホピ族のカチーナ人形、日本の赤べこ、中南米?の生命の樹などなど。特に櫛のコレクションは美しい。オフィスにあった、かつての姿を再現した引き出しを開けると、レイの豊かな感性を目の当たりにすることができます。チャールズの才能を補完したレイの特異の才能を感じ取るには絶好です。

【第1位】アメリカの光景 Glimpses of the U.S.A.  アメリカ文化を紹介する7面スクリーンのスライドショー。会場では7つのテレビモニターを使って再現してます。冷戦の真っ只中、1959年モスクワで上映されたものです。それもバックミンスター・フラー設計のドームのなかで。フルシチョフ時代のソ連。冷戦中といってもキューバ危機の前、雪解けムードの頃です。依頼主はアメリカ政府の情報局。イームズはジョージ・ネルソンを通じてアメリカ文化/資本主義体制のプロパガンダの仕事を受けます。が、このスライドショーは単純な政治的なプロパガンダを超えています。摩天楼や高速道路、アメリカ人の豊かな生活、大自然を映し出し、資本主義体制の優位さを宣伝しますが、最後のメッセージは友愛。ラストのスライドはワスレナグサの鉢植えです。忘れないで──。英語ではForget-me-notと呼ばれる青い花。ロシア語でも同じ意味の名がついています。ワスレナグサはソ連の観客を泣かせたと、イームズの元スタッフでアメリカの光景の製作に関わり、イームズの研究家としても知られるジョン・ニューハートが、かつて取材の際に教えてくれました。フラードームの中にいる気持ちになって見てみましょう。

この展覧会はドイツのヴィトラ・デザインミュージアムと、アメリカの議会図書館が企画したもの。ワシントンの議会図書館には、ロサンゼルスの海岸沿いの街ヴェニスにあったイームズ・オフィスに残されていたイームズの作品や仕事道具、写真、資料がすべて寄贈されていますから、まだまだお宝が眠っています。第二弾、第三弾のイームズ世界巡回展を期待したいものです。

あっ、サクッと感想を書くつもりだったのに、書き込んでしまった。仕事しなくちゃ。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-12-01 18:24
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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