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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
セミナーの後に思ったこと
トーク二連荘でした。金曜日は金沢美術工芸大学で講義、土曜日は秋田道夫さんとのセミナー。金美では「攻殻機動隊とユニバーサルデザイン」というテーマ。攻殻を映画もTVも全部観たという学生と講義のあと、けっこう熱く話し込んだのですが、その学生によると何を言っているのか分からないと思った人もいたとのこと。話を詰め込みすぎたかも。

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そして昨日は秋田さんとのトーク。対談とは書きません。「秋田道夫」というデザイナーの根っこの部分を引き出すのが僕の役目でしたから。ほどよく引き出せたと思っています。

秋田さんのことばには、デザイナーとしての自信が漲っていました。
見えない何かが見えている。それをかたちにできる方法を会得している──そんな自信です。

秋田さんが求めるかたちはshapeではなく本来的な意味でのformです。「形態」でなく、アリストテレスの言う「形相」という意味での「フォルム」です。システムであり、デザイン言語のレベルであり、菊竹清訓氏の三段階デザイン方法論「か/かた/かたち」で言えば「かた」です。

「か/かた/かたち」とは、理論物理学者の武谷三男が提唱した認識論の三段階「本質/実体/現象」を建築デザインの世界に応用したものです。量子物理の世界では、電子は粒子としても波動としても観測されます。電子は実体であり、波や粒子は現象です。

いまプロダクトデザイン界では、“現象としてのかたち”のプロフェッショナルはあまた存在します。絵がうまいとか売れるデザインを作りましたとか、そのレベルの自慢なら聞き飽きています。

いわゆる有名デザイナー・建築家の多くは、現象としてのかたちを超えて仕事をしています。工学技術やコンピュータ言語、もしくはマーケティング理論やブランド構築を深く理解し、科学や経営学の知見をかたちに落とし込む術を会得しています。かたちの実体論レベルは科学であり経済であるといった考え方です。

かたちにはかたちの実体論レベルがあると認識してその世界を追い求めているデザイナーは希少種になりつつあります。かたち(shape)の上にあるのは、構造や機構やビジネスモデルといった次元だけではない。かたち(shape)の上にかたち(form)がある。言い換えると、かたちの奥底にかたちのことばがある。そこは、マレーヴィチやモンドリアン、カンディンスキー、クレー、ブランクーシ、ドナルド・ジャッドといった人たちが探っていた「形相」という意味でのフォルムの世界です。

フォルム/かたちのプロの本来見据えるべき世界に自分が両脚でしっかり立っている。回りを見回してもそんなデザイナーぜんぜん見当たらない。その自負が秋田さんの自信の背景だと、僕はそう思うのです。
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といっても、聞きようによっては自意識過剰だろ、と突っ込みたくなる発言もありました。自分のこと、カッコいいとまで語ってましたから。でも、それを慢心だとかイタイと受け取った人をあの会場ではほとんどいなかったと思います。

トークが終わって、何故なのかなあ、と考えました。

あれは自慢ボケです。諧謔です。だからホントは僕がすばやくツッコミを入れなくてはなりませんでした。しかし大阪出身の人のボケの合図に即座にツッコミを入れてサラリとイジる反射神経を僕は持ち合わせていません。でもその合図は会場の人たち全員が感じていたと思います。みんながそれぞれ、おいおい、オッさん、そこまで言うんかい、と思って聞きながら、ツッコミを待っている秋田さんの懐の中に入っていく。トークのテンポの良さはそこから来ていたと思います。

かたちの可能性を語ることはデザインの可能性を語ることです。秋田さんはちょっと変わった諧謔を交えて、それを熱心に説いていたから、あれやりました、これやりました、だけの自慢トークなんかに聞こえなかったのだと思います。

土曜日、お越しいただいた皆様、ありがとうございました。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2005-12-11 13:30
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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