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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
復刊望む
デザイン史の必読書ジークフリート・ギーディオンの『機械化の文化史』は現在品切れ中。Amazonでは古本が1.5倍のプレミアがついている。定価10,290円。もともと気軽に手に入れられる本ではないが、それがさらに入手困難になっている。僕は数年前、第四版を古本屋で手に入れた。

で、正月、原稿書きのため、この700ページの大著を書棚から引っ張り出し、かなり大雑把に斜め読みをした。サクッと分かったのは本の内容より、品切れの原因。Atokじゃ変換できない言葉が何度も出てくるのだ。トサツ。

ギーディオンは近代のアッセンブリー・ラインの起源を19世紀のアメリカ・シンシナティの食肉産業に見る。豚を殺して、煮沸し、毛を削ぎ、吊して解体していく。分業化された流れ作業となったこの過程を、ギーディオンはヘンリー・フォードによるT型フォードの組み立てラインに先立つものとして、詳細に分析している。丁寧な説明だから例の差別用語が頻出する。読んでてイタタタって感じ。

翻訳は差別用語をうるさく言わなかった1977年のものなので、この言葉が使われたことは仕方ない。ところどころキ×ガイとかツ×ボとか出てきながら学術的・歴史的価値があるということで再版されている本ならたくさんある。といっても、ここまで頻出しているとさすがに重版を控えたくなるだろう。直すのは大変な作業だ。版の全面変更が必要になるので金がかかる。

しかし、である。鹿島出版会は修正作業を速やかに行うべきだ。知らないでやったことだからもう知らない。金がかかることはしたくないからお蔵入り、というのは名著の版権を持つ出版社のすべきことではない。耐震基準が1970年代と現在では全く違うように、差別用語の基準も変わる。みなが使う公共の建物は過去の法律の耐震基準が甘かったから放っておけばいいというものではない。もし危険なら早急に補強しなければならない。それと同じ責任が出版社にもある。

できることなら文庫版にして欲しい。建築デザインの基本図書の文庫版化、どこかの出版社で進めてもらえないものだろうか。手軽に新刊で買える学生に勧められる基本図書が少なすぎる。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-01-04 23:55
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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