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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
追悼 ナムジュン・パイク
追悼 ナムジュン・パイク_d0039955_19335367.jpg
ナムジュン・パイクが亡くなりました。2000年だったか初めてニューヨークに行ったとき、ソーホーで車椅子のパイクを見かけました。あの時も白いシャツで吊りズボンでした。

忘れもしません。ソーホーの地下鉄の駅の出口を出たら、ビョークが歩いていたんです。シルクの深緑のドレスを着ていて目の前を通り過ぎていった。目を疑って、振り返るともういなかった。そして30分後にパイクを見かけた。ソーホーってこんなに有名人が歩いてるんだと感激したものです。

1981年僕が広島の高校から東京の大学に入って、東京で最初に見かけた有名人は小森のおばちゃまでしたから。ニューヨークですれ違ったパイクとビョークという強烈な組み合わせに、20年の時間差があるとはいえニューヨークと東京の文化密度の違いを感じたものです。

よれよれの白いシャツ、吊りズボンのパイクの姿は、マリオ・ボッタがワタリウムを建てる前のギャルリー・ワタリで見かけしたのが最初だったと思います。84年東京都美術館で開かれたパイクの大回顧展の前後のことです。

同じ時期、東京ではヨーゼフ・ボイス展が開催されていました。そして6月2日草月ホールでヨーゼフ・ボイスとパイクの伝説的なパフォーマンスが行われます。見に行きました。ボイスはマイクを両手で持ち雄叫びを放ちつづけます。パイクはショパンの曲や赤とんぼなどをピアノで演奏します。やがて鍵盤をマイクで叩いたり、ピアノの弦を直接引いたり、ピアノの下にもぐり込んだり、破壊的パフォーマンスに変わっていきます。こうして二人は東京へ“原アメリカ”の象徴であるコヨーテの魂を招きます。

霊媒師という意味でのメディアと、遠隔通信媒体という意味でのメディアが重なり合い、暴走します。メディアは本質的に魔術的非合理性から逃れることができない。パイクもボイスもそれを知っていたと思います。

84年のパイク展の会場では、衛星回線を使った世界同時パフォーマンス「グッドモーニング、ミスター・オーウェル」のビデオを流してました。いま考えると同時多発テロの予言のようです。

で、昨日、あのビデオに出演していたイギリスのポップバンドって何て名前だっけ?と思っていろいろ検索をかけました。トンプソン・ツインズ。完全に忘れてた名前です。感傷に浸るため、彼らの懐かしの曲「ホールド・ミー・ナウ」をダウンロードしようとiTunesのミュージックストアで探しましたが曲もバンドも検索でヒットせず。残念です。

パイク様、ありがとうございます。僕は深くあなたの仕事に影響を受けています。謹んでご冥福お祈りします。

*Link 朝日新聞の訃報記事
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-01-31 10:16
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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