藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
世界をデザインする
昨日の話の続きだが、史上最もデザインされた国家はナチス・ドイツだと思う。ヒトラーは明らかに世界をデザインしようという意志を持っていた。人種も文化も道徳も、経済も軍事的パワーバランスも。

ハーケンクロイツを中心としたブランディング。その旗印の下に形成された機能的組織。ゲッペルスの宣伝戦略。シュペアーのベルリン再開発計画。民族の祭典を成功させたプロデュース力。アウトバーンなどを整備するインフラ構築。ガン治療の研究が最も進んでいたという国民の健康や衛生を重視した姿勢。ナチスがフェルディナンド・ポルシェ博士に依頼して38年に量産を始めた国民車は、戦後ビートルという愛称で世界の人々を魅了する。フォルクスワーゲンとは国民車という意味である。

デザインは両刃の刃だ。ナチスの例は極端だが、たとえ善のためにデザインするという意志があっても、今の時代に道徳的なことが、100年後に道徳的かはわからない。社会の隅々まで「今の人」が良かれとと思ってデザインすれば、それだけで将来へ刃を向けていることなのかもしれない。いや、同時代だって、世間に自分の声を通す術をよく知っている人たちが声を出す術を持たない人たちを傷つける。その痛み──。それを知らしめないで、デザインの概念の拡張はありえない。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-12-01 19:42
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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