藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
クリスマスイブ
川崎駅西口に新しくできたショッピングモール「ラゾーナ」へ映画を観に行きました。
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「鉄コン筋クリート」と「武士の一分」を立て続けに2本。映画をハシゴすると、どちらかをすっかり忘れてしまったり、互いが打ち消し合ってそれぞれの印象が薄くなるので良くない、とずっと思ってきましたが、昨日はそんなことありませんでした。

「鉄コン筋クリート」は傑作です。「都市」に棲む「精霊」たちの攻防の物語だと思って観てました。主人公のクロとシロは土着のミシャグチ(ミシャクジ)神、彼らが外来の神と合体しビリケンのような顔になった蛇神と闘う……。
都市の描き方が超絶です。中銀カプセルタワーのようなメタボリズムな建築が悪の住処になっていたり。デザイン・建築系の方々は、絶対に観ておいたほうがいいでしょう。サントラもいいです。

「武士の一分」。こちらもいい映画でした。あるプロダクトの原稿を書いていて「一分」という言葉が気になって観に行ったのですが、昔よく読んでいた藤沢周平の読後感が甦りました。あの余韻を出したいと思って、昔ずいぶん文体を真似しようとしたっけ──
「──のあと改行」とか。

「鉄コン筋クリート」と「武士の一分」──この2本、全然関連性がないようで、実は物語の基本構造が同じです。お互いを補完しあう2人がいて、何らかの事情でどちらかが欠ける。バランスが崩れ、決闘・対決の中で死・闇を垣間見る経験をへることで、再び2人は相互補完関係を取り戻し、閉じた宇宙にバランスが戻る。ともにヒューマニスティックなドラマです。で、その物語の一部始終を見つめているのは、ジイさん──。卑しき世界に身を隠す老賢者が、死と再生のドラマを見つめているのです。神話的な構造を持つ話は、やはり強いです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2006-12-25 10:24
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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